ほっと一息だけじゃない
料理の消臭にも活躍
活性酸素を抑制
糖尿病防ぐ効果
仕事で煮詰まったときや、ほっと一息入れたいときの心強い友の代表格はコーヒーだろう。かつて体に毒といったマイナスイメージもあったが、最近は活性酸素を抑制する働きや糖尿病の予防効果などに注目が集まっている。飲むだけでなく、料理にも使えるコーヒーの応用範囲は着実に広がっているようだ。
朝7時。東京・品川駅構内のスターバックスJR東海品川駅店には、通勤前のビジネスマンやOLの姿が目立つ。男性には、ドリップコーヒー、女性にはエスプレッソにミルクやチョコレートを入れたものなどに人気が集まっている。
エスプレッソは豆に高圧をかけて短時間でコーヒーを抽出するため、濃くて香りや苦みが強い。ミルクやチョコレートで苦みを和らげつつエスプレッソ独特の香りを味わおうというわけだ。マーケティング部の浦沢美綾さんによれば、最近は豆乳を使ったミルクを使う女性が増えている。
仕事へ切り替え
浦沢さんは「1日に何回も利用する人もいます。朝と昼では来店の目的も違うこともあるようです」と話す。実際、コーヒー店をよく利用する女性(25)は「朝は仕事モードへの切り替え、昼は仕事で煮詰まった気持ちをほぐすために飲みに行く」と言う。
コーヒーは以前、体によくないものと考えられていた。しかし、ここ数年の研究で体に良い効果をもたらすことがわかってきて、そのよさを取り入れたほうがいいという方向に変わっている。
コーヒーの成分でよく知られるのがカフェイン。覚醒(かくせい)作用が有名だが、利尿効果も期待できる。カフェインには、血管を拡張させて血液の循環を高める働きがある。腎臓内の血流がよくなると、腎臓の動きが活発になり尿が促される。
さらにここ2、3年、注目されてきたのが血糖値を下げる働きだ。カフェインが血糖値を下げるインスリンの分泌をもたらすという。遺伝子の研究をしている滋賀医科大学の旦部幸博さんは「糖尿病に効果がある」と話す。
クロロゲン酸もコーヒーの成分として重要だろう。調理学が専門の女子栄養大学の高橋敦子教授によると、クロロゲン酸には体内の酸化の原因になる活性酸素を抑制する働きがあり、がんの予防などにも効果があるといわれる。
がん軽減の調査も
コーヒーががんの危険性を軽減することについては、東北大学の辻一郎教授(公衆衛生学)と大学院生の島津太一さんが先月開かれた日本疫学会で調査結果を発表した。それによると約6万1千人を追跡調査したところ、コーヒーを1日1杯以上飲む人は全く飲まない人に比べ、肝臓がんになる危険性が6割程度だったという。
コーヒーは飲み物の顔のほか、食べ物への応用が利くという性格も持つ。日本インスタントコーヒー協会(東京・千代田)のインストラクターで管理栄養士の塚原美恵子さんに、調理への利用法を教えてもらった。
塚原さんはまず、コーヒーの持つ消臭効果に着目。レバーや青魚のにおい消しに使えると話す。
例えばイワシやサンマの煮物をつくるとき、砂糖や酒、水のほか、インスタントコーヒーを大さじ2杯くらい入れる。すると臭みがとれるという。レバーの場合、「インスタントコーヒーや牛乳などでつくった液に、15−30分程度つけるのがいい」(塚原さん)。
また、「豆腐とコーヒーの相性は抜群」と塚原さん。豆腐をババロア風にして、コーヒーや砂糖などで作ったタレをかけるのもよい。
飲み過ぎには注意
いくら体にいいとはいえ飲みすぎはよくない。「コーヒーは嗜好(しこう)品。薬を飲むつもりで飲む必要はない。また、効果を得られるのもケース・バイ・ケースで、飲む人によっては逆効果になることもある」(滋賀医科大の旦部さん)。また、金沢大学で「コーヒー学」講座を開いている広瀬幸雄教授は「新しいコーヒー豆を使った方が効果があがる」と指摘する。
イワシのコーヒー煮
材料(4人分)
■イワシ 8尾
■酢、熱湯 適宜
■ショウガ 2分の1かけ
■ワカメ(もどす) 40グラム
■インスタントコーヒー 大さじ2
■酒 4分の1カップ
■砂糖 大さじ1
■水 2カップ
■ショウガの薄切り 8枚
■木の芽 4枚
作り方
1.イワシは頭と内臓をとって塩水で洗い、酢を加えた熱湯に入れて表面が白くなる程度にゆで、ざるにあげる
2.2分の1かけのショウガは千切りにして水にさらす
3.鍋にインスタントコーヒー、酒、砂糖、水を入れて煮立ててイワシを並べ、ショウガの薄切りを加える
4.落としぶたをして中火で静かに煮立てて煮汁をかけながら15分くらい煮る
5.4にワカメを加えてひと煮する
6.器に盛り、水気を切った千切りのショウガ、木の芽を添える
琥珀豆腐ババロア
材料(4人分)
■絹ごし豆腐 2分の1丁
A(牛乳 200cc・砂糖 40グラム・インスタントコーヒー 小さじ1)
■水で湿らせたゼラチン 7グラム
B(インスタントコーヒー 大さじ4・砂糖 大さじ1・水 大さじ2)
■かたくり粉 小さじ2分の1+水大さじ1
作り方
1.豆腐を裏ごしして鍋にとり、Aを加えて沸騰させてゼラチンを加える
2.粗熱がとれたら氷水でとろりとするまで冷やし、器に入れて冷蔵庫で冷やし固める
3.Bを鍋に入れ火にかけ、水溶きかたくり粉でとろみをつけて冷まし、皿に盛った2にかける
2005.2.12 日本経済新聞