無理なく全身運動
ひざなどの痛みに効用も

水中ウオーキングが人気だ。泳げない人も、水中特有の浮力や抵抗のある環境で体を動かせるうえ、動きを工夫すれば、脂肪燃焼を促し、スリムな体づくりにも役立つ。各地に歩行専用のプールも登場するなか、一人で効果的に取り組むためのコツをまとめた。

「陸上で歩くのとは違って、水中は適度な負荷かかるので、疲れているときも気持ちよく体を動かせます」。こう笑顔で語るのは、千葉県に住む30代の矢木真理子さん。矢木さんはフィットネスクラブ大手、セントラルスポーツの会員で、地元のクラブで週3回以上、水中ウオーキングを楽しんでいる。

パートとして立ち仕事が多い矢木さんは、「動くときに自然にマッサージされるのか、足のむくみが解消される。さらに水圧を生かし、自分の工夫次第でスリムにしたい部分を効率よく動かせる点もいい」とその魅力を話す。

日本エアロビックフィットネス協会(東京・文京)の会長である宮下充正・放送大学教授によると、水中運動には次にような特徴がある。

まず、水に浮力があるので足首やひざ、腰に負担がかからない。続いての特徴は抵抗だ。「例えば、陸上で手を動かしても、ほぼ抵抗を感じないが、水中で動かすには抵抗に勝る力が必要でエネルギーを使うことになる」。動きの速さを変え、負荷を自在に調整できる利点もある。

様々な特徴から、宮下教授は、「水中運動で手足をうまく動かせば、全身の筋肉を活動させられる。陸上より効率よくエネルギーを消費するので、余分な脂肪がとれたスッキリした体作りに有効」と話す。だれでも取り組めて運動不足を解消でき、「生活習慣病のリスクを低減できる」というメリットもある。

セントラルスポーツは半年以上クラブに通い、週1回以上、水中ウオーキングをする成人男女に効果を尋ねた。それによると、実施前ひざに痛みがあった人のうち8割弱が「良くなった」と回答。腰痛・肩こりがあった人も、それぞれ6割以上が改善した。

もっとも、陸上とは環境が異なるので、思わぬ事故やケガに気を付けたい。宮下教授は、「一番深い場所でも、自分が立てる深さかどうかなどを頭に入れておき、滑りやすいプールサイドはゆっくり歩いて」と助言する。さらに入水前は1、2分、伸びをしながらプールサイドを歩き、水中の姿を想像するなど気持ちも整えるように勧める。

水中でいざ歩く際は、腰に負担をかけないようにやや前傾する。浮力で体が浮きやすくなるので、一歩一歩踏み出す際は、沈み込む方を意識して、かかとをしっかりつこう。もう1つ。セントラルスポーツの岩田昌子・アカデミー部係長は、「腕を動かす際、胴体の軸がふらつかないように注意したい」と話す。

岩田さんに脂肪燃焼を促す動きを教えてもらった。下半身に効果を求めるなら、ひざを高く上げてみる。足の甲でサッカーボールをけるイメージで、足をけり出す動きも取り入れたい。ももの裏側の引き締めには、かかとを尻につけるようにしよう。

逆に、上半身に重点を置き、背中をスッキリさせたい場合は、両手を前に伸ばし、ひじを曲げるようにしてキュッと脇を締めながら歩くといい。平泳ぎのように、手で水をかき、下からすくい上げるようにすれば、腕を引き締め、胸を美しくする。

宮下教授によると、「望ましい運動量は20分歩き、ジャグジーなどで体を冷やさないように10分休み、再び20分歩くこと」である。水深にもよるが、歩く速度は20分間に25メートルプールを8−10往復が目安という。「これまでの研究では週2回以上実践すると、科威力が10−20%向上し、高血圧症、糖尿病、高脂血症の症状の軽減や予防などの効果が得られる」

体力にもよるが、「初心者は様々な動きを取り入れつつ、まずは30分続けることを目標にしたい」と岩田さん。最初から無理せず、徐々に慣れていくことが大切だ。



水中ウオーキングで取り入れたい動き

●下半身を動かす


ひざを高く上げ、水を踏みつけるように足を下ろす
×
ひざを上げた時お尻が出ないように注意

サッカーボールをけるイメージで足の甲で水をけり上げながら進む
×
水の重さに負けて横にけらないよう注意


●上半身を動かす
平泳ぎのように水をかく→鍋の底をさらうイメージで水をすくい上げる
両手は横にした「8」の字を描くように水中で動かし、足は交差させるように前へ出す

注)放送大学の宮下充正教授、セントラルスポーツの岩田昌子・アカデミー部係長の話を基に作成
2005.5.28 日本経済新聞