口のにおいは誰にでもある。ただ、清潔志向を反映してか、自分の口臭に深刻に悩む人は多い。気になるにおいはどのような仕組みで発生するか。原因は。ちょっとした工夫で簡単にできる口臭対策とあわせて紹介しよう。
「口臭の原因の大半が、口の中にある」。こう語るのは東京歯科大の角田正健教授。特に、歯周病が「犯人」であるケースがほとんどだ。歯周病は、歯垢(しこう)がたまって歯肉に炎症が起きる病気。日本人は30代後半以降になると、およそ8割が患っているというデータもある。食べかすなどがあると歯垢はできやすい。
口の中は新陳代謝が活発で細胞が絶えず入れ替わっている。また、300から400種類あわせて約500億個の細菌がいつも活動している。いらなくなった細胞の成分であるたんぱく質を、こうした細菌が分解してくれるが、このとき発生する揮発性硫化物がにおいのもととなる。
歯周病のため口の中で炎症が起きていると、不要な細胞が増える。その結果、たんぱく質の分解量も増え、口臭も増大するというわけだ。
口臭を防ぐには、まず、歯周病を予防しなければならない。細菌のかたまりである歯垢が残らないように毎日正しく歯を磨くにつきるが、これが案外難しい。
角田教授は「どこに磨き残しがあるか。自分の歯磨きのクセをよく知ること」と言う。歯と歯の間や、歯肉との境目に歯垢はたまりやすい。歯の汚れだけを赤紫色に染める液が市販されている。歯磨き後にこの「染め出し液」を使って1本1本歯をチェックし、染まった面積を2割以下にするのが正しい歯磨きの目標。「週末など時間のあるときに実行し、どの程度磨くと歯垢が取り除けるかを習得してほしい」(角田教授)という。
口臭を防ぐもう1つのポイントがだ液だ。だ液の殺菌力が口の中の雑菌の繁殖を抑え、不要になった細胞も洗い流してくれる。分泌量が少なくなるとこの機能が低下する。とくに、高齢者の場合、加齢や薬の影響でだ液が減り口が渇いて口臭がでやすい。
五味クリニック(東京・新宿)の五味常明院長が勧めるのが「お口体操」。「パ」「タ」「カ」「ラ」の発音を何回も繰り返すと、自然とだ液が出やすくなる。食事前などに1、2分間実践してみよう。介護が必要な高齢者などは、ものを飲み込む(嚥下、えんか)力が落ちて、口の中にどうしても食べかすが残る。「ほおを膨らませてへこます」動作や「舌を出したり引っ込めたりする」動作を繰り返し、舌を出して上下の唇につける練習をすると、飲み込む力が鍛えられるという。
口臭対策でもうひとつ気をつけたいのが、舌のケアだ。舌の表面に舌苔(ぜったい)と呼ぶ白いコケのようなものがたくさん付着すると、においが出やすくなる。歯ブラシやガーゼ、専用器具などを使って軽くぬぐい取ろう。ただ、完全に取り除くのは不可能。強引にごしごしやると、舌の表面を傷つけ、味覚を損なうこともあるから気をつけたい。
体調不良が原因で口がにおうことがあると言われているが本当だろうか。
例えば、糖尿病だと甘酸っぱいにおい、腎臓病だとアンモニア臭がするといわれるが、内臓疾患が原因で口臭が発生するかどうかは専門家の間でも意見が分かれる。
昔から胃の調子がよくないと口が臭くなるといわれているが、胃と口をつなぐ食道は嚥下のときだけ開き、普通は閉じている。「胃の中のにおいが口からでることはまずない」(角田教授)という。
アルコールを飲み過ぎたり、ニンニク料理を食べたりした翌日に口が臭いのは、においの成分が血液中に溶けて肺に運ばれ、呼気に混ざって出るからだ。時間がたって血中濃度が薄まると、においは自然と消えていく。
ただ、胃腸の機能が低下すると舌苔が増加するといわれている。不規則な生活が続き、ストレスで自律神経のバランスが崩れるとだ液の分泌も減る。入念に口の中をケアしても、なかなか強い口臭がなくならない場合は、「口臭外来」なでで一度専門医に診てもらうのがよいだろう。
だ液が少ない |
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「体操」で改善 |
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「パ」「タ」「カ」「ラ」の発音を繰り返すとだ液がでやすくなる |
歯周病の恐れ |
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正しく歯磨き |
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歯と歯肉の境目に歯垢はたまる。磨き残りは2割以下が目安 |
食べ物も注意 |
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ニンニク臭は自然に消える |
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血中に溶け、呼気から出る。気になるようなら口臭スプレーなどを使う。 |
舌に「コケ」 |
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舌苔の除去法 |
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割り箸の先にガーゼを巻き、やさしく丁寧にふく |
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