朝起きて鏡をみると、目の下にはくま。夕方仕事を終えたころには目が充血……。こんな経験はないだろうか。くまや充血は目のトラブルの危険信号。何より目元は顔の印象を大きく左右する。しっかりしたケアが大切だ。
くまや充血の原因は「疲労」。まず、くまができるメカニズムから見てみよう。
人間は1日に約2万回もまばたきをする。寝ている間でも、まぶたは完全には休息していない。表参道皮膚科(東京・渋谷)の谷田由香院長によると目の回りには眼輪筋という筋肉があり、まばたきや視線を移す際など、無意識に目を閉じるときには眼輪筋を使う。眼輪筋が働きすぎることによって疲労がたまり、静脈のうっ血を起こす。
目の回りの皮膚の厚みは平均で0.6ミリ、顔の皮膚の3分の1しかない(資生堂)。
このため、血流が悪くなった血管が表面に見えてきてしまう。これが「うっ血型」のくまだ。
さらに、うっ血することで酸素などの栄養が十分に行き渡らず、皮膚組織の細胞が正常に新陳代謝を行えなくなる。紫外線などの外的要因が加わり、メラニンなどの老廃物がたまる。これが「色素沈着型」のくまとなる。
表参道皮膚科では、くまの治療に訪れる人は女性が主で、20歳代後半から気にし始める人が多い。一概にはいえないが、くまの様子が日によって変わる場合はうっ血、毎日定着してしまっている場合はメラニンというのが見分けのポイントだ。
次に充血のメカニズムを知っておこう。眼球の白目にはたくさんの血管がある。この血管が広がった状態が充血。主な要因は傷やバイ菌による炎症や酸素不足である。
人間は1分間に20−30回まばたきをして涙を目に供給し、涙を通じて酸素を運んでいる。ところが、パソコン画面などに集中しているとまばたきの回数は激減し、1分間に2−3回ということも。こうなると十分な酸素が行き渡らず、10秒以上目を開けていられないような「ドライアイ」に陥ることもある。
ロート製薬製品情報部学術情報グループマネージャーで薬剤師の力石正子さんは「携帯電話のメールやモバイル機器の普及で、現代人は目を休める時間が非常に少なくなっている」と指摘する。
くまも充血も、目の酷使が大きな要因であり、谷田さんも力石さんも「目に休息を」と強調する。以下のように目の休憩時間を設けよう。
1)時々、目を閉じて、目を休ませる。コンタクトレンズを使用している人はレンズを外して。
2)目の回りのマッサージ(イラスト参照)。
3)ホットタオルで目を温める。
特に、ホットタオルは目と目の周囲の血流をよくするから、ぜひ実行したい。マッサージの際は力を抜くことが鉄則。強いマッサージは目や目の周囲の皮膚を傷める。
パソコン作業中は、時々意識的にまばたきすることが大切。睡眠不足も目の健康の大敵だ。また、くまはカフェイン摂取や喫煙で血流が悪くなることも原因といわれるので、くまがひどくなったらコーヒーやたばこは控えることも有効(谷田さん)という。
くまの治療にはビタミンEやビタミンKが配合された塗り薬や美白剤がある。ただし、皮膚科での診療は健康保険の適用外だ。充血の場合は、「まず目薬で涙を補ってほしい」(力石さん)。塩酸テトラヒドロゾリンといった充血除去剤を含む目薬が有効だ。
目薬を使う際はまず手を清潔にし、片手で「あかんべえ」をする。目薬がまつげやまぶたに触れないように点眼。点眼後は1分くらい目頭を軽く押さえて目を閉じる。こうすることで、目薬がのどに流れてしまうのを防げる。
目は口ほどに、というように、人の印象を大きく作用するもの。1日数分でいいから、目に休憩時間をつくり、すっきり目元を手に入れたい。
(ライター 藤原 仁美)
(1)眉頭(まゆがしら)の下のくぼみを中指で3秒くらい押さえてから、眉の下を骨にそてなぞり、目の下を通ってもとに戻る。さらに、目のまわりをまわってからこめかみまで指をすべらせ、こめかみを押さえる。
(2)中指と薬指で目の下をなぞる(注:1、2とも、力を抜いてなでる程度に)
(3)中指で●の部分を3−5秒くらいゆっくりと押す
(資生堂「くまBOOK」より) |
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