江戸時代から日本の家庭で常食されてきた寒天。味も栄養もないとして長い間脇役扱いだったが、最近は食物繊維が豊富でカロリーがほとんどないためダイエットに最適、と店頭で品切れになるほどの人気だ。がんやリウマチなどの炎症抑制に効果があるという研究報告も出ている注目の食品、寒天の上手な取り方を探った。
「寒天を取っていたら少しやせたんですよ」。東京・新宿に近い初台にある寒天製品店で寒天ゼリーや粉寒天を買っていた主婦(37)はちょっとうれしそうに話してくれた。母親が食前に寒天を取るようになったら、「半年で10キロくらい体重が減った。体調もいい」という。そこで、「母のレシピ通り、ところてんのようにして食前にいただいています」。
この店は昨年12月、寒天メーカーの伊那食品工業(長野県伊那市)が開いた寒天製品のショップ兼カフェ。今年、テレビ番組や雑誌で寒天のダイエット効果が相次いで紹介されたため、一時は大混雑でてんてこ舞いだったという。
寒天ダイエットの先駆けとなったのが横浜市立大医学部の杤久保(とちくぼ)修教授。長年、循環器系の臨床医を務めていた杤久保教授は次第に内臓脂肪がたまる人が増えていることに気づいた。肥満に高血圧、糖尿病、高脂血症が重なると「死の四重奏」とか「メタボリック症候群」と呼ばれ、死亡率が高まる。
患者にはダイエットを勧めるが、「3−4割の人はどうしても挫折する」。そこで、減量に役立つ食材を探したところ、寒天が最適と分かった。寒天は?ノンカロリー?保水効果が他の食品に比べ抜群に高く、かさが増えて食事のカロリーを落とせる?食物繊維が豊富で便通を促す――といった効果があり、「死の四重奏」を防ぐという。
杤久保教授によると寒天は、粉寒天にして3グラムほど入ったゼリーなどの食品を毎日、夕食前に食べるのが効果的。最近、粉のまま10グラム、20グラムもお茶などに溶かして飲む人もいるが、「おなかが張って下痢や便秘の原因になる」と警告する。また、毎日体重を量り、歩数計をつけることを勧める。意識的に歩いて筋肉を維持するためだ。
寒天は胃酸など強い酸で分解されるアガロースと分解されにくいアガロペクチンの2つの食物繊維でできている。ダイエット効果があるとされるのはアガロペクチンの方だ。一方、アガロースには、動物実験ではがん細胞を死滅させたり、リウマチなどの炎症を抑える効果があることが分かった。
アガロースは胃で分解され、腸内でこうした効果を発揮する物質に変わって吸収されるとみられている。これらの効果を発見したタカラバイオ(滋賀県大津市)は缶入りの「飲む寒天」は今年、目標の10倍も売れたという。同社の加藤郁之進社長は「寒天ダイエットの面で注目が集まってきたが、今後は効能に期待がかかる。メカニズムの研究や製品開発を進めたい」と話す。
どんなにいい食品でも手軽においしく食べられなくては続かない。寒天を使った様々な料理で知られる料理研究家、小菅陽子さんに上手な取り方を聞いた。
寒天は粉や糸、棒などの形があり、小菅さんによると、それぞれに適した調理法がある。例えば、糸寒天は細長いので中華料理のチンジャオロースに混ぜればかさ増ししてカロリーを減らせる。いちばん多い粉寒天は米を炊くとき1合あたり1グラム入れれば、それと気づかずに取れる。
寒天を扱うときに最も大事なのは「必ずしっかり煮溶かすこと」。小菅さんは「糸や棒は形がなくなるが、粉はわかりにくいので、沸騰した状態で1分半から2分は煮てから使って」とアドバイスする。
(編集委員 大橋 牧人)
●揚げナスとレンコンの合わせ酢かんあえ(2人分)
ナス2個(120グラム)、レンコン50グラム、揚げ油適量、合わせ酢かん65ミリリットル、いりギンナン20グラム、ミツバ少量
?ナスは縦半分に切って斜めに切れ目を入れ、一口大に切る。レンコンは乱切りにして水にさらし、水気をきる
?170度に熱した揚げ油に?を入れて素揚げにし、油をきる
?合わせ酢かん(※)を細かく崩し、?とギンナンを加えてあえ、器に盛る。ミツバを散らす
※だし大さじ5杯、酢大さじ5杯、薄口しょうゆ小さじ2杯、塩小さじ半分、砂糖大さじ1杯半、粉寒天小さじ半分(1グラム)
耐熱ボウルに材料を合わせてよく混ぜ、ラップをかけずに電子レンジ強で1分加熱する。取り出して底からかき混ぜ、再び電子レンジ強で1分半加熱し、流し缶やボウルで固める(130ミリリットル分)
●トマトかんと豆腐のサラダ(2人分)
トマトかん200ミリリットル、豆腐4分の1丁、ドレッシング適量
?トマトかん(※)は丸型で抜き、厚さ5ミリに切って扇状に4等分する
?豆腐も同様の厚さ、大きさに切る
?器に?と?を盛りドレッシングをかける。塩こしょうは好みで
※トマトジュース(有塩)200ミリリットル、粉寒天小さじ半分(1グラム)
トマトジュースをなべに入れて粉寒天を振り入れ、さっと混ぜてから中火にかける。煮立ったら弱火にして混ぜながら2分かけて煮溶かし、流し缶やボウルで固める
(注)小菅陽子さんのレシピより
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