若い女性だけでなく、中高年や高齢者にも便秘に悩む人は多い。おなかが張るといった不快感だけではなく、放っておくと大腸がんの発症リスクが高くなることもわかってきた。便秘にも原因・症状別にいくつかタイプがある。生活習慣を見直し、自分にあった対策をとることが大切だ。
【会社員Kさん(32)の朝は落ち着かない。仕事が忙しく、何も食べずに家を飛び出す。朝食をとっていた時はきちんとあった便意も最近は消え、便秘がちになった】
Kさんのような朝を過ごしている人の便秘は、「直腸性便秘」と呼ぶタイプ。朝目覚めると腸も動き出す。そこへ食べ物が胃に入る刺激が加わると、腸はさらに動く。朝食後、自然と便意をもよおすのはこのためだ。忙しくて我慢するとだんだん感覚が鈍くなり、便秘になる。
平塚胃腸病院の平塚秀雄理事長は「朝食は、排便のリズムを作るためにも不可欠」と言う。朝食後は便意がなくても5分ほどトイレに座って、自然のリズムを生かすことが便秘の予防になる。起きがけにコップ1杯の水を飲むと腸への刺激になり効果的だ。
【主婦のMさん(67)は、年とともに食べる量が少なくなった。基礎代謝が落ち消費カロリーも減っているため、摂取カロリー面では問題ないが、なぜか便秘するようになった】
快便には十分な量の食物繊維を取らなければならない。国が定めた1日の摂取量目安は15−27グラム。食生活の欧米化によって不足しがちな人が多い。キノコや海藻類などを食べよう。
また、東邦大学の酒井義浩教授は「パンやうどんの代わりに、五穀米などごはん類を食べてほしい」と勧める。食物繊維が多く、腸を動かすビタミンAやEも入っている。
年をとると便を押し出す力も衰える。全身の筋肉が衰えるのと同じように、腸の筋肉も弱まって起きる「弛緩(しかん)性便秘」になりやすい。
腸の下には、腸腰筋がある。歩く時に使う筋肉だが、意識して太ももを高く上げると鍛えることが可能。1日5−10分程度実践してみよう。
「肛門(こうもん)体操」は、便を押し出す最後の踏ん張り力を鍛えるのに効果的。肛門に意識を集中し、ぐっと引っ込めるように力を入れる。5秒ほど抑えてから力を緩める。立っていても座っていても誰にも気づかれずにできるので「電車の中など暇なときにこっそりとやってみては」と酒井教授はいう。
【まじめなCさん(26)は、仕事が立て込むと便秘になる。おなかが張ってまるでウサギのフンのようにぽろぽろの便が出る。左腹部に痛みを感じることもある】
「けいれん性便秘」は若い人を中心に増えている。几帳面(きちょうめん)でまじめな人がなりやすい。ストレスで自律神経のバランスが崩れると腸のところどころで管が狭まり、便が出にくくなる。
このタイプの人は、便秘にいいからといって食物繊維を取りすぎると、逆効果になることもある。腸が詰まった状態のまま便がたまっていくため、激しい腹痛が起きることも。根本的な便秘解消には、日常生活で精神的なゆとりを持つよう心がけるしかない。
便秘が続くと便秘薬や下剤を飲むことになるが、強引に便を流し出すと排便リズムが乱れる。症状がひどい時は服用はやむを得ないが、少しずつ減らして自分のリズムを取り戻す努力が必要になる。
降圧剤や胃かいよう治療薬、抗うつ剤など薬の中には、腸の働きを押さえ、便秘になるものがいくつかある。便秘外来を担当する順天堂大学の細田誠弥医局長のところには薬を飲んでいる患者がよく来るが「薬が便秘の原因になっていることを知らない人が多い」。便秘がひどい時は薬の量を減らすことができるかどうか主治医に相談してみよう。
たかが便秘と思いがちだが、放っておくと命取りになる病気が潜んでいることもある。例えば大腸がんのポリープがあると、便がつっかえて便秘になりやすい。便秘がちな人は「40歳を過ぎたら一度大腸がん検診を受けてほしい」と平塚理事長は強調する。
(鴻知佳子)
便秘の種類 |
直腸性便秘 |
結腸性(弛緩性)便秘 |
けいれん性便秘 |
原因 |
トイレの我慢 |
腸の筋力の低下 |
ストレス |
症状 |
便が硬い
残便感がある |
お腹が張る |
硬くてウサギのフンのような便
左腹部の痛み |
どんな人に多い? |
女性
下剤をよく使う人 |
高齢者
食べる量が少ない人 |
若い人
ビジネスマン |
対策 |
朝食をしっかり食べる
朝にトイレの時間をとる |
食物繊維が多い食事
腸が動くように運動 |
精神面のゆとり
香辛料、食物繊維が多い食事は避ける |
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