運動メニュー自分にぴたり
最新の加圧方式も

スポーツジムなどで、自分の目的や体質にぴったり合う特別な運動メニューを求めて「パーソナルトレーナー」を活用する人が目立つ。プロの運動選手の間で先行していたが、この6−7月に専門組織や企業が相次ぎ設立されるなど、一般へのサービス向上を狙った動きも出ている。実情と上手なトレーナー選びについて探った。

東京・目黒の「スポーツプレックス目黒」の会員でウェブデザイナーのA子さん(36)は、パーソナルトレーナーについて2カ月目。「筋肉をつけ、スーツを格好良く着こなす」ことが目的だ。

米国で9年指導したトレーナーの大西仁美さん(33)は、マシンを使った運動ではなく腕立て伏せやスクワットで大きい筋肉を鍛えたり、バランスボールを使って深層筋を鍛えたりするメニューを提案した。美しい筋肉のためには、重い負荷より回数をこなすことが重要だからだ。

「女性は、効果が見えない間の精神的なサポートがないと長く続かない」と大西さん。その日のA子さんの心身の状態を見極めてメニューを決め、普段の生活や栄養指導についてはメールのやりとりなどでフォローしている。

一方「3カ月後に結婚するのでお腹の脂肪を減らし、ウエディングドレスが似合うようにしたい」と考え「東急スポーツオアシス」(東京・新宿)に通うメーカー勤務のB子さん(29)は、トレーナーの千場英生さん(39)に最新の運動技術を期待する。千場さんは加圧トレーニングの専門家だからだ。

加圧トレーニングとは、東京大学医学部付属病院の加圧トレーニング・虚血循環生理学講座で研究されている方法。腕とももの付け根に巻いたベルトで圧力をかけ、血流を適度に抑制しながら運動する。代謝物の増加や酸素環境の変化で筋線維が太くなり、早期に筋力アップが図れる。千場さんは指導要請を1日17件も受けることがある。

日本でパーソナルトレーナーを最初に活用し始めたのは、1990年ごろのプロ野球選手とみられる。一般の利用は2000年前後に始まった。現在では東京都内の中堅ジムで30人のトレーナーが所属するようになった。彼らは体成分測定器で身体分析をし、筋肉量や脂肪量、基礎代謝量の測定などで運動メニューを組んでいく。

A子さんが通うスポーツプレックス目黒には男性4人、女性3人のパーソナルトレーナーが所属する。トレーナーから月2回サポートを受けるA子さんのコースに必要な費用は、登録料19800円と月会費21000円。コース利用ばかりでなく、入会登録と月会費16800円を払い、追加メニューとしてトレーナーを利用する人も多い。大西さんに頼む場合、1時間7350円だ。

パーソナルトレーナーの一般化について、東海大学医学部教授で高輪メディカルクリニックの久保明院長は「受け手からのオーダーメードで医療や疾病予防の方向を決める手法が現在ひとつの流れになっている。トレーナー需要も、この反映だろう」とみる。

しかし日本の場合、トレーナーの資格認定は、ACSM(米国スポーツ医学会)など権威団体が確立している米国の水準に達していないのが実情だ。公益法人が認める健康運動系の資格やジムが独自に設ける資格などのほか、複数の新しい資格も並立する。

6月に医療機関などとの連携で生活習慣病予防を狙う任意団体「日本メディカルフィットネストレーナー協会」、7月にフィットネス現場のサービス向上を目指す企業「日本パーソナルトレーナーズ協会」が設立され、それぞれ資格認定を始める。

日本パーソナルトレーナーズ協会の吉永孝徳さんは「トレーナーのスキルしだいで結果は変わる。特に30代以降の女性が依頼者の場合、その人の心や考えに踏み込む能力が大切」と、指導者選びの重要性を強調する。トレーナーを選ぶ場合、表を参考に自分で相性や能力を見極めることが必要だろう。
(ライター  高谷 治美)


パーソナルトレーナーを選ぶポイント

1.相手の雰囲気
健康的であること。同性であれば自分が理想とする体つきの人を
2.スポーツ経歴・資格・指導歴
学生時代に打ち込んだスポーツを知ることで運動神経を確認できる。民間資格などを持っている場合は、指導範囲の目安に
3.得意分野
自分の目的に応じて筋力アップなど得意分野のトレーナーを選ぶといい。最近はヨガやピラティスなどのトレーナーがいることも
4.初回のカウンセリング・金額
初カウンセリングの際に相性を重視。自分の目的を理解しているかなどをじっくり探る。1回ずつのオーダーが多いので、合わない時は遠慮なくチェンジを。料金は30分の指導で3000円程度が多いが、15000円のトレーナーも存在する。


(吉永孝徳氏の話から作成)


2006.8.19 日本経済新聞