日常生活に密接な関係

 

健康への関心が高まり、睡眠についてより良く知りたいという人が多くなった。生活スタイルが24時間化し、夜勤や交代勤務も増え、睡眠による休養が十分にとれない人が多くなったこともひとつの理由だろう。

1980年のアラスカ沖タンカー座礁事故、スペースシャトルチャレンジャー号事故は、睡眠不足によるヒューマンエラーが大きく関係していた。2003年、山陽新幹線で起きた居眠り運転は運転士の睡眠時無呼吸症候群が原因だった。睡眠障害は大きな事故の原因となりうる。

人類の長い歴史を考えると、夜間に安心してぐっすり眠ることができる世の中になり、人々の関心が睡眠に向いてきたとも考えられる。肉食獣など過酷な自然の脅威にさらされていた時代、人々は物音がすればすぐに目覚めて対処できるよう備え生き抜いてきた。

睡眠学の発展で眠りの重要性が科学的に明らかになってきた。健康には良い眠りが欠かせない。睡眠不足や不眠があると高血圧になりやすい。実験で1日の睡眠を4時間に制限すると、健康な人でも血糖値のコントロールが乱れる。長期追跡研究から不眠はうつ病発症の危険因子になることもわかってきた。

米国と日本で睡眠時間と寿命との関連性を調べる大規模調査が行われ、1日の睡眠時間が極端に長かったり短かったりする人は7時間眠る人と比べて相対的に寿命が短いことが報告されている。
厚生労働省が2000年に全国3万2千人を対象に実施した調査によると、睡眠で休養がとれていない人が成人の33.3%おり、不眠を訴える人も44.8%、日中、眠ってはいけない人が2.7%、睡眠薬を週1回以上使用する人は約5%にのぼった。

睡眠は日常生活に大きくかかわる問題だ。私たちの生活、健康、睡眠について睡眠学の立場から考えていきたい。


2007.1.7 日本経済新聞