経口避妊薬は子宮頸癌の相対リスクを増加させ、そのリスクは使用期間に関連するという先行データが24の試験のメタアリナシスによって確認された。
Roxanne Nelson |
経口避妊薬の使用は浸潤性子宮頸癌のリスク増加に関連する、と多国間共同子宮頸癌疫学研究(International Collaboration of Epidemiological Studies of Cervical
Cancer)の研究者らは報告する。『Lancet』11月10日号に発表された24の試験のプールデータ解析で、経口避妊薬を使用している人はその使用期間が長いほど癌の相対リスクが上昇することが分かった。
付随論説でロンドン大学クイーン・メアリー(イギリス)ウォルフソン予防医学研究所のPeter Sasieni, PhDは、子宮頸癌と経口避妊薬の関係は現在使用中の人と最近まで使用していた人に限られることから、経口避妊薬はおそらく癌の悪性進行の原因になると考えられる、と記す。
「しかし浸潤性子宮頸癌との関連性はCIN3 [グレード3の子宮頸部上皮内新生物] との関連性より強くないことが疫学的に分かっている。このため、外因性ホルモンでCIN3が発生することはあっても、それ以上の作用はないと考えられる」と博士は書く。さらに、この関連性は使用を中止した直後から弱まり、中止から10年経過後では非常に関連が弱くなることが分かったという点では安心であると指摘する。
同研究に協力したオクスフォード大学(イギリス)癌疫学部の疫学者、Jane Green, MDらは、24の試験のプールデータを再解析し子宮頸癌と経口避妊薬の使用パターンとの関係を調査した。コホートは合計で子宮頸癌女性16,573名、対照35,509名となった。
「ピルのリスクと利益を総合的に検討するとき、この論文は基本的にジグゾーパズルの1ピースのような検討材料になる」とGreen博士はMedscape Oncologyに語った。「ピル服用中に増加したリスクはなくなる。したがって、ピル使用により絶対的に増加する一生涯の子宮頸癌リスクは小さいということが分かり安心した」。
Green博士らは、現在経口避妊薬を使用している女性のうち、使用期間が長い女性ほど浸潤性子宮頸癌のリスクが高いことを見出した。経口避妊薬を5年以上使用した女性のリスクは一度も使用経験のない女性の約2倍であった。
また、大体20歳から30歳まで10年間経口避妊薬を使用すると浸潤性子宮頸癌の累積発生率が上昇し、先進工業国では女性1000人当たり3.8〜4.5人、発展途上国では1000人当たり7.3〜8.3人が50歳までに浸潤性子宮頸癌になると推定する。
経口避妊薬の使用を中止した後このリスクは低下した。中止後10年以上経過すると、リスクは未使用者と同率になった。浸潤性および非浸潤性癌、ハイリスクなヒトパピローマウイルス(HPV)陽性女性でも、同様のリスクパターンがみられた。HPV感染状況に関する情報は13の研究で得られたが、解析はハイリスク株のみに限られていた。
「経口避妊薬とHPV暴露または感染との関係は複雑で、時期、場所、文化によって全く異なる」とGreen博士は言う。「我々は、HPV暴露または感染の主要な決定因子となる性的パートナーの数を解析に考慮に入れた。可能であればコンドームの使用も考慮した。我々のデータセットで、経口避妊薬を使用した女性がHPV陽性ハイリスク群である可能性は有意に高いわけではなく、その他の研究と一致する。よって、経口避妊薬の使用が単純にHPV感染に関連するとは思えない」。
この子宮頸癌リスクの微増、同じく乳癌リスクの微増よりも、経口避妊薬の利益の方が重要であることを忘れてはならない、と博士は説明した。経口避妊薬の利益はもちろんであるが、卵巣癌および子宮内膜癌のリスク低下もそのひとつである。
「出産は高齢になってからでいい、子供は少なくていいという考えで経口避妊薬を使用している女性の場合、経口避妊薬そのものは子宮頸癌のリスク低下につながる」とGreen博士は話した。
Sasieni博士は、「ホルモン避妊薬と子宮頸癌の関連を徹底的に調べたこのメタ解析は、HPV感染に影響するコファクターと子宮頸部新生物を科学者が理解するのに役立つ。また、子宮頸癌の不安は経口避妊薬の使用を避ける理由にならないことが分かったので、女性にとっては安心な結果である」と論説に書く。
同研究は、Cancer Research United Kingdom、国際がん研究機関および国連開発計画/国連人口基金/世界保健機構/世界銀行Special Program of Research, Development and Research
Training in Human Reproductionから研究費の援助を受けた。
Sasieni博士はCancer Research United Kingdomから研究費の援助を受けた。
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