骨量の減少と過剰な免疫反応という関節リウマチの2つの症状を、同時に抑える化合物を高柳広(たかやなぎ・ひろし)・東京医科歯科大教授(骨免疫学)らの研究チームが開発した。ラットの実験で有効性を確認し、1日付の米科学誌サイエンスに発表した。
リウマチの治療薬のほか、骨がもろくなる骨粗しょう症や、免疫がかかわっているとされる多発性硬化症などの薬としても期待できるという。年内にも米国で、骨の破壊を症状の1つとする多発性骨髄腫を対象に臨床試験を始める予定だ。
骨の内部では、骨を作る骨芽細胞と、骨を分解する破骨細胞がバランス良く働いているが、破骨細胞の働きが過剰になると骨量が減って病気につながる。
チームは、破骨細胞が分泌する、骨を分解する酵素「カテプシンK」の働きを抑える化合物を開発。関節リウマチを発症させたラットに投与したところ、予想通り骨の破壊が抑えられた。
ところが、ラットは同時に、過剰な免疫反応で起きる関節の炎症も治まり運動能力が回復。実はカテプシンKが免疫をつかさどる樹状細胞を活性化する作用を併せ持ち、化合物がこの働きを抑えたことが分かった。
高柳教授は「骨の代謝にかかわる酵素が、免疫にも関与するとは全く予想外。強い治療効果が期待できるのではないか」と話している。
|