大気汚染は血栓形成リスクを高める
大気汚染が進むとDVTのリスクは急上昇し、「許容範囲内」の汚染レベルでもリスクがみられる
Daniel J. DeNoon
WebMD Medical News
【5月12日】大気汚染は、米国環境保護庁(EPA)による「許容範囲内」の汚染レベルであっても、深部静脈血栓症(DVT、静脈内に血栓が形成される危険な疾患)のリスクを高めるという。
ハーバード大学の研究者Andrea Baccarelli, MD, PhDらはイタリアにおいて、1995-2005年にDVTと診断された870例を調査した。研究者らは、DVT診断の前年における大気汚染浮遊粒子への曝露について、これらの患者とDVTのないマッチする被験者1,210例とを比較した。
研究の結果、DVTのリスクは、大気汚染浮遊粒子が12μg/m3(空気)(本研究で測定された最低汚染レベル)を超えて10μg/m3増加するごとに70%高くなることが明らかになった。
大気汚染浮遊粒子に関する米国EPAの基準は150μg/m3(空気)である。しかし、おそらく大気汚染浮遊粒子に関連する健康リスクの大半は、微小および非常に微小な粒子によって引き起こされている。EPAはこれらの微小粒子の基準として大幅に低い値を設定しているが、Baccarelli博士らはこれらを具体的に測定しなかった。
「我々の知見は、DVTの病因論に新しい身近な危険因子を導入するものであり、同時に、都市の大気汚染物質による健康被害の抑制を目的とした基準の厳格化と継続的努力を求める声に対し、さらに現実味を持たせている」とBaccarelli博士らは結論付けている。
大気汚染は心臓と血管に対し、肺よりもさらに大きく影響を及ぼす、と大気汚染の心血管系への影響を専門とするミシガン大学のRobert D. Brook, MDは指摘している。Brook博士による論説は、Baccarelli博士の報告とともに『Archives of Internal Medicine』5月12日号に掲載される。
大気汚染に関連する心血管系疾患として、心臓発作、心不全、脳卒中、突然死など多くが挙げられているが、今回の研究はこれにDVTを追加するものである、とBrook博士は指摘している。
しかし、Baccarelli博士らが大気汚染とDVTリスクの大幅な上昇を結びつける一方で、今回の結果の一部は偶然または対象集団に特有の環境によるものである可能性がある、とBrook博士は注意を促している。絶対的なリスクを明確に判断するには、さらに他の研究が必要である。
こういった点を考慮しても、我々は今後の研究成果をただ待つ必要はなく、現在の大気汚染レベルであっても健康によくないことはすでに明らかである、とBrook博士は述べている。
「例えるならば、あなたに何者かが毒矢を放ったとき、体に刺さった矢を引き抜くという判断を下す前に、射手の正体をこと細かに知る必要はないということである」とBrook博士は記している。
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