発がんや老化など有害な作用を持つ「活性酸素」を、生物が除去する新たな仕組みを、産業技術総合研究所関西センター(大阪府池田市)などのチームが見つけた。将来、老化を遅らせる薬などの開発につながる可能性もあるという。
同センターの中村努主任研究員と大阪大大学院工学研究科の井上豪教授らは、微生物の一種「古細菌」が活性酸素除去に使うたんぱく質を結晶として取り出した。この結晶に、活性酸素の一種である「過酸化水素」を加えた。
活性酸素の分解過程で、どのような物質が生じているかを詳細に調べるため、反応後の時間を少しずつ変え、マイナス190度で凍結。反応が進まないようにして分析した。その結果、「スルフラン誘導体」という硫黄化合物が見つかった。従来は除去に関係しないと考えられていた物質で、活性酸素を除去する新しい仕組みという。
中村研究員によると、古細菌のたんぱく質に似たたんぱく質は人体にもある。反応を詳細に研究すれば、老化を遅らせる薬の開発にもつながるとみられる。硫黄化合物の新たな合成法を開発できる可能性もあるという。米国科学アカデミー紀要(電子版)に掲載された。【渋江千春】
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