動脈硬化や心筋梗塞(こうそく)など生活習慣病の原因とされる血中のコレステロール。バランスのとれた食事が第一の予防法だが、最近コレステロール値を下げる働きを持つ食品が相次いで登場している。専門家も「うまく活用すれば健康維持の助けになる」と、適度な利用を勧めている。

特定保健用食品に相次ぎ指定

食用油・ソーセージ・飲料・・・でも取りすぎには注意

成人71人を対象にした試験の結果、総コレステロール値は1ヵ月で平均7.1%低下――。花王が3月に発売した食用油「コレステロールを下げる健康エコナクッキングオイル」は、医薬品にも似た厳格な試験を経て開発された。

この油は「ジアシルグリセロール」と「植物ステロール」と呼ばれる油脂が主成分。ジアシルグリセロールは、小腸で吸収された後に肝臓や全身の筋肉ですぐに燃えてエネルギーとなり、体脂肪として蓄積しにくい性質を持つ。もうひとつの植物ステロールは、大豆や米などの胚芽(はいが)に含まれる物質で、コレステロールの吸収を妨げ体外に排出させる作用がある。

2種類の油の機能が相まって、血中のコレステロール値を下げる働きは強い。花王ヘルスケア第一研究所の安川拓次所長は「油が体内で代謝される仕組みを利用している。これまでの食用油にはなかった機能」と解説する。

血中コレステロールを
低下させる仕組み

ソーセージにもコレステロール値を下げる新製品が出現した。日本ハムが2月に発売した「ワンデイバランス ポークウインナー」は、コレステロールと結合して体外に排出するたんぱく質が含まれている。成人を対象にした試験結果で、血清中の総コレステロール値が低下、人体に必要な善玉コレステロールが増えることを確認した。脂肪分も従来のソーセージの半分以下に抑えた。

協和発酵もこの2月、コレステロール対策の粉末清涼飲料「コレステブロック」の販売を始めた。この清涼飲料には、大豆たんぱく質から作った有用成分が含まれ、コレステロールの吸収を妨げるほか、血中コレステロールを体外に排出する作用も持つ。「大豆たんぱく質がもともと持つ機能を高めた新しい食品」(協和発酵)という。

これらの食品はいずれも、厚生労働省が認定する「特定保健用食品」の指定を受けている。同食品は「医薬品並みにきちんとした試験が必要」(厚生労働省)で、メーカーは試験結果を同省に提出。効果を確認した上で表示が許される。1991年の制度発足後、これまでに約240品目が指定され、市場規模は2千億円を超えているという。

指定を受ければ、表示が消費者の目安となり、メーカーにとっても宣伝効果は高い。花王が99年に売り出した体内で脂肪となりにくい作用を持つ食用油は、価格が600グラム入りで700円前後と普通の油に比べ約4倍高いが、2000年度見込みで約100億円を売り上げる、特定保健用食品には珍しいヒット商品に育った。

注目を集める食品だが、利用の仕方には注意も必要だ。お茶の水女子大生活環境センターの近藤和雄教授は「特定保健用食品を活用する場合でも、ほかの栄養素とのバランスを考えることが重要」と指摘している。

厚生労働省や関連学会は健康を維持するために望ましい食事の成分比率のガイドラインを公表している。
例えば、脂肪の摂取量は全エネルギーの20−50%程度の割合がよいとしている。特定保健用だからといってたくさん摂取すれば、効果はなくなる。

大豆たんぱく質を含むソーセージや清涼飲料なども、食べ過ぎ飲み過ぎは禁物。「食事の全体のバランスをまず理想に近づける。次善の策として特定を補助的に活用するのが賢い方法」(近藤教授)のようだ。

(2001.4.7 日本経済新聞)