ヒトの細胞表面に付着する「糖鎖(とうさ)」と呼ばれる物質のうち特定の種類が肺がんと膵臓(すいぞう)がん、関節リウマチの患者で増減することを北海道大学先端生命科学研究院の西村紳一郎教授の研究グループが発見し、16日発表した。西村教授らはこれまで難しかったこれらの病気の早期診断が「90%以上の確率で可能になる」としており、今後、分析を重ねて検査技術の実用化を急ぐ。
糖鎖はあらゆる体細胞の表面にあり、西村教授らは患者の血清を分析。肺がんの患者では「LC27」、膵臓がんでは「PC35」と名付けた糖鎖が健康な人の半分以下になっていることを見付けた。関節リウマチでは「LA54」という糖鎖が倍以上に増えていた。
糖鎖はさまざまな病気に関係しているとみられ、がんなどの早期診断への活用が期待されているが、分析に時間がかかるのが欠点だった。西村教授らは塩野義製薬(大阪市)と共同で5年前から研究を開始。従来の1000倍近い速さで1日96検体を分析できる装置を開発し、昨年、肝細胞がん患者が特有の糖鎖の組み合わせをもつことを発見している。
西村教授は「今回は単純に1種類の糖鎖で診断できるところが特徴。1滴にも満たない血液があればよく、将来は通常の健康診断で調べられるようになる」と話している。【去石信一】
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■ことば
◇糖鎖
グルコースなどさまざまな種類の糖が複雑な組み合わせでつながった分子。細胞の表面に突起した状態で付いている。その細胞に接したものが栄養素かウイルスかなどを見分けるセンサーの役目をもつ。糖鎖の異常が病気や機能低下の原因になるとも言われ、世界的に研究が活発化している。
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