減量のガイドラインを米国スポーツ医学会が発表

減量のための身体活動ガイドライン改訂

米国スポーツ医学会が、成人の減量および体重再増加予防のための適切な身体活動に関するガイドラインを改訂

Laurie Barclay

【2月23日】米国スポーツ医学会(ACSM)は、成人の減量および体重再増加予防のための適切な身体活動(PA)に関するガイドラインを改訂した。この声明は、2001年のACSM勧告の改訂版であり、『Medicine & Science in Sports & Exercise』2月号に掲載されている。2001年の勧告では、減量を必要とする成人の同定、推奨体重減少量、食事制限、レジスタンス・エクササイズの実施、薬物療法の使用、行動療法などが取り上げられた。

「今回の改訂の目的は、1999年以後に発表された新しい情報、つまり、体重増加の予防、減量、体重再増加の予防には、2001年のガイドラインの推奨量よりも多くのPA量が必要な可能性があるということを示唆していると考えられる情報、に焦点を当てることにあった」と、ASCMのJoseph E. Donnelly, EdDらは記している。「特に、今回は、National Weight Control Registry(NWCR)および米国医学研究所(IOM)による体重管理に必要なPA量に関する情報を受けて改訂された。この改訂は、体重増加の予防(つまり、体重の安定)、減量、体重再増加の予防を目的としたPA試験に参加している18歳以上の人に対して行われた」。

過体重や肥満はさまざまな慢性疾患に関連しているが、成人の66%以上がこの過体重または肥満であるので、体重管理に関するガイドラインが必要である。米国立心臓肺血液研究所(NHLBI)のガイドラインは、肥満者に対して10%の減量を推奨しているが、多くのエビデンスが3%-5%の減量で健康上のリスクが減少するということを裏付けている。

体重増加の予防、減量、および減量後の体重再増加の予防のために、PAを体重管理の構成要素として推奨する。軽度の身体活動は1.1-2.9METS、中等度の身体活動は3.0-5.9 METS、強度の身体活動は6 METS以上と定義されている。

2001年のACSMガイドラインは、過体重および肥満の成人に対して、健康改善のために中等度のPAを週150分以上、長期減量のために週200-300分行うよう勧めていたが、改訂ガイドラインは、週150-250分の中等度PAは体重増加の予防には有効であるが、減量にはあまり効果的ではないということを示唆している。

PA量がそれよりも多い場合に(週250分以上)、臨床的に有意な体重減少が報告されている。厳しい食事制限ではなく、適度な食事制限を行った研究において、週150-250分の中等度PAは減量に有効であった。横断研究およびプロスペクティブ(前向き)研究の結果によれば、週250分以上のPAは、減量後の体重維持に有効であるが、PAが減量後の体重再増加の予防に有効であるかどうかを確認するための優れたデザインのランダム化対照試験は行われていない。

レジスタンストレーニングは体重減少を促進しないが、健康上のリスクを減少させると同時に、除脂肪量を増加させ、脂肪量減少を促進させる可能性がある。現時点で利用できるデータによれば、持久PAやレジスタンストレーニングによって、体重が減少しなくても、健康上のリスクが減少する。現在までところ、PAが体重増加期間中の慢性疾患のリスクの有害な変化を予防するか改善するかを確認するにはエビデンスが不十分である。

現在までのところ、65歳以上の成人を対象とした研究はほとんどないが、高齢者の体重減少は除脂肪量減少および骨量減少を引き起こす可能性があるという懸念があるため、この集団を評価することは重要である。この声明は、一般集団に当てはまるエビデンスを検討しているが、体重増加の予防、減量、体重維持のためのPAの効果は個人差があるということを指摘している。

AIDS、1型糖尿病などの激しく体重に影響を及ぼす併存症を有する患者を対象とした研究、薬物療法を用いた試験は検討の対象から除外されたが、高血圧、心血管疾患、2型糖尿病などの共存症に対して薬剤を使用している患者を対象とした試験については検討の対象となった。

具体的な臨床勧告およびそれらを支持するエビデンスのレベルは次の通りである。

体重増加を予防するために、大部分の成人において、週150-250分(1200-2000kcal/週)のPAが3%以上の体重増加を予防する(エビデンスレベルA)。
PA量が多いほど減量効果が高く、体重減少量は、週150分未満のPAではごくわずか、週150分以上では約2-3kg、週225-420分以上では5-7.5kg(エビデンスレベルB)。
減量後の体重を維持するために、週約200-300分のPAが体重再増加を最小限に抑えるのに有用であるということを示唆している研究もあるが、「多ければ多いほど良い」。現在までのところ、減量後の体重再増加の予防に必要なPA量に関するエビデンスを提供している優れたデザインの十分な検出力をもつエネルギー・バランス研究はない(エビデンスレベルB)。
ライフスタイルPAは、文献に記載されているエビデンスを評価するために定義を改善すべきあいまいな用語であるが、大部分の成人において、最終的には肥満につながるわずかなエネルギーのアンバランスの改善に役立つ可能性がある(エビデンスレベルB)。
厳しい食事制限ではなく、適度な食事制限を行った場合に、PAは減量を促進する(エビデンスレベルA)。
限られた研究エビデンスによれば、レジスタンストレーニングは、食事制限の併用の有無にかかわらず、減量に無効である。しかし、一部の限られたデータは、レジスタンストレーニングがエネルギー制限時に除脂肪量の増加・維持および体脂肪の減少を促進するということを示唆している。さらに、レジスタンストレーニングは、高比重リポ蛋白コレステロール低値、低比重リポ蛋白コレステロール高値、インスリン感受性、血圧などの慢性疾患のリスク因子を改善する可能性もある(エビデンスレベルB)。

「現時点で利用できる科学文献に基づいて、ACSMは、著しい体重増加を予防し、関連慢性疾患のリスク因子を改善するために、成人に対して中等度のPAを150分/週以上行うよう勧めている」と、ガイドラインの著者らは記している。「適度の減量効果を得るために、過体重者および肥満者に対して、このレベルのPAを行うよう勧めている。しかし、PA量が多いほど効果が高いようであり、中等度のPAを約250-300分/週(約2000kcal/週)行うことによって、より大きな減量効果および体重再増加予防効果が得られる」。

これらの勧告は、米保健福祉省(Department of Health and Human Services:HHS)米国人のための身体活動ガイドライン(Physical Activity Guidelines for Americans)の 勧告と一致している、とガイドラインの著者らは述べている。

出典
Med Sci Sports Exerc. 2009;41:459-471.

Medscape Medical News 2009. (C) 2009 Medscape


2009.3.3 記事提供 Medscape