皮膚のガンについての見解、Dr中川

Dr.中川のがんを知る:実践編71 皮膚の場合

◇足裏のほくろ、要注意

 ほとんどの皮膚がんは、皮膚の一番表面の表皮と呼ばれる部分から発生します。表皮はいくつかの細胞層からできる薄い組織です。一番下の基底層は1層の基底細胞からできており、この基底層の細胞が分裂して上の有棘(ゆうきょく)層の細胞(有棘細胞)になります。有棘層は表皮の大部分をしめ、最後は垢(あか)になって死にます。また、基底層のところどころにメラニン細胞があり、メラニン色素を作り出します。

 基底細胞からできる基底細胞がんは、日本で最も多い皮膚がんで、皮膚がんの3分の1を占めます。高齢者の顔面に多く、悪性度は低く転移はまれです。有棘細胞からできる有棘細胞がんは、基底細胞よりやや少ないがんですが、悪性度が高く、転移を起こすこともあり、外科切除や放射線治療が必要となります。やはり、顔面や頭部に多く、紫外線の影響が大きいタイプです。

 悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラニン細胞やほくろの細胞からできたがんで、早期に転移を起こしやすく、最も悪性度が高い皮膚がんです。紫外線との関連が示唆されており、近年のオゾン層の破壊のせいか世界的に急増しています。日本の患者は白人と比べて少ないですが、増えています。

 ただ、日本人の場合、紫外線を浴びない足の裏やつめの下にできやすいため、慢性的な刺激が関係している可能性も指摘されています。悪性黒色腫の4分の1は足の裏にでき、目に触れにくいため、発見が遅れがちです。たまには自分の足の裏を見てみることが大切といえます。特に、大人になってできたほくろが急に大きくなり、5ミリ以上になった場合は要注意です。

 皮膚がんは、メラニンが少なく、紫外線に抵抗力が低い白人に多いがんです。日本人はメラニンが多い人種ですが、過度な日焼けは避けたほうが無難でしょう。ただし、紫外線によって体内でできるビタミンDは、がんを予防すると言われています。毎日少しずつ日の光を受けることは、私たち日本人にはプラスといえるかもしれません。(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)



2009.3.17 記事提供 毎日新聞社