メタボ:死亡率との関係調査 肥満でなくても危険性大--厚労省研究班
◇メタボ重点健診に疑問
厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター部長)が全国の40-69歳の男女約3万人を対象に実施した大規模調査で、肥満でなくても血圧や血糖値など血液検査値に異常があれば、死亡の危険性が高まることが明らかになり、日本循環器学会誌などに発表した。(社会面に解説)
国は昨年度からメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策を目的に肥満に重点を置いた特定健診を始めたが、研究班は「メタボ健診だけでは、太っていなくても病気を発症する危険性がある多くの人を見逃す危険性がある」と指摘。特定健診は導入後3年で見直しされる予定で、今後の議論の大きな根拠になる可能性が高い。
メタボと死亡率の関係について、10都府県の3万4000人を約13年追跡した。日本人を対象にした同様の調査では、最大規模という。心筋梗塞(こうそく)など虚血性心疾患は、メタボの場合、男性で約3倍、女性で約2倍、死亡する危険性が高かったが、肥満ではない人でも血圧や血糖値などが診断基準を超えた場合、死亡の危険性はメタボの人と同様に高かった。病気の種類を問わない男性全体の死亡率もメタボの有無による違いはなかった。
また、8県の2万3000人を対象に実施した分析では、虚血性心疾患の患者のうち、高血圧が原因で発症したと推測されるのは全体の5割近くに上った。一方、メタボによって発症した割合は2割未満にすぎず、メタボ対策の効果は限定的とみられる。日本人の死因の第1位であるがんの発症にもメタボの有無は関係なかった。
津金部長は「肥満重点の対策で期待できる効果は小さく、禁煙や血圧の管理など効果が期待できる対策を推進すべきだ。今回のデータを健診制度を見直す際に役立ててもらいたい」と話す。【永山悦子】
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■ことば
◇特定健診
メタボ対策による医療費削減を目的に、08年度から始まった。会社や国民健康保険などの医療保険者に実施が義務づけられている。健康悪化は腹部肥満が原因との学説に基づき、腹囲や、身長と体重で計算する体格指数(BMI)が基準値を超えたうえ、血圧、血糖値、血中脂質の血液検査値が基準値を超えた場合、特定保健指導を受けることになる。原則として40-74歳の被保険者と被扶養者が対象。
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