緑深まるこれからの季節、露天ぶろでゆったりというのは何とも魅力的。温泉に入ると体がよく温まり、疲れが取れるものだ。これから出かける人のために、温泉を十分楽しみ、温泉の効用をより高める入浴法を紹介しよう。 |
体が芯(しん)から温まり、出た後もポカポカ感が続く。気分がリフレッシュして疲れがよく取れる。だれもが感じるこうした温泉の効用には理由がある。
体がよく温まるのは、何より浴槽が広いから。家庭のふろと違い体を大きく伸ばせるので体と湯が接する面積が広くなる。だから体が温まりやすくなるのだ。
もちろん浴槽の大きさだけではない。温泉の健康増進効果に詳しい北海道大学医学部の阿岸祐幸名誉教授は「温泉はお湯にミネラルなどの有効成分が含まれるため、体が温まりやすい」と付け加える。
温泉の効用を高めるには
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体を洗う |
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足の先から体の上の方へ5〜10杯のかけ湯を
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浴槽にゆっくりと体を沈める |
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浴槽では「浮遊法」を。頭を浴槽のへりに乗せ、全身の力を抜いて体を水面近くに浮かせて横たわる |
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入浴後はシャワーなどで体を流さない |
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入浴後はコップ1杯の水を飲む。 |
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注)酸性やアルカリ性の強い温泉の場合は、
入浴後シャワーを浴びる。
また肌が弱い人はさら湯を浴びた方がいい。
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日本の温泉は有効成分によって、炭酸泉、食塩泉、硫黄泉など9つの泉質に分かれる。塩分が特に多い食塩泉は「熱の湯」と呼ばれるほど体がよく温まる。「湯の中の塩分は肌表面の油分やたんぱく質と結びついて皮膚表面を薄く覆う。この膜が汗の蒸発を防いで体温を逃さないため、温泉から出た後もポカポカ感が長続きする」と、北海道大学保健管理センターの大塚則助教授は説明する。
温泉には「転地効果」もある。普段の生活場所から離れると気候や環境が変わるため、心身がリフレッシュしやすいのだ。「自宅から少なくとも100キロメートル以上離れた場所に行くといい。気圧や電磁波などの状態が変わり、自律神経が刺激される」(阿岸名誉教授)
では、温泉の効用を最大限引き出し、温泉を十分楽しむためにはどうすればいいのか。
まず、浴槽に入る前に体を洗うこと。エチケットとして当然だが、入浴前の準備運動にもなる。入る時にはかけ湯をしたい。体を湯の温度に慣らすことで、急激な血圧の上昇を防げるからだ。また、浴槽にはゆっくりと入ろう。浴槽では水圧で心臓や肺に負担がかかる。それも血圧の急上昇の原因になる。
水圧の影響を極力小さくするためには、浴槽の中で「浮遊浴」を試したい。浮遊浴とは、浴槽内で体を横たえ、体全体を心臓の高さに近づけて入浴する方法だ。ふろに長く入っていると息苦しく感じるのは、水圧で心臓や肺が圧迫されるため。浮遊浴なら、水面近くに心臓や肺があるため水圧を抑えることができ、長く湯に入っていられる。
浮遊浴は頭を浴槽の端に乗せ、あおむけになって手足をゆったり伸ばし、体を水面近くに浮かせる。温泉はさら湯よりも浮力が大きいため、意外と簡単だ。ひざを曲げて足を浴槽の底に付けてもよい。このとき、目を閉じればリラックス効果が高まる。湯を浅く張った「寝浴」の施設がある温泉も、心臓や肺への負担が少ない。
入浴は15分間を目安にする。37−40度のぬるめの湯に15分間ほど入ると副交感神経が刺激され、精神的にリラックスできると言われている。また、塩分による膜が肌表面にできるのに15分ほどかかる。
熱い湯に入るときは「1回の入浴時間を3分間ほどにとどめ、5分間休んでまた入るという反復浴をするといい」(日本温泉療法医会の植田理彦会長)。
浴槽から出たらシャワーで流さず、タオルで体を軽くふく。温泉の有効成分が肌に残って、ポカポカ感が長続きするからだ。ただし酸性やアルカリ性が強い温泉の場合はかぶれの原因になるので、シャワーで流した方がいい。入浴中は、意外にに汗をかく。出たらコップ一杯程度の水を飲もう。
温泉の効用を十分に得るには、わき出したままの湯を使っている「源泉100%の湯」を選びたい。源泉を水で薄めたり循環させたりすると、有効成分が薄まってしまう。実はそのような温泉は全国各地に意外と多い。宿泊前に源泉かどうかを宿に確認するといい。(『日経ヘルス』編集部)
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