足のむくみ 着衣に一工夫
全身の乾燥 水分は多めに
耳の不快感 あめをなめる
いよいよ大型連休。海外旅行に出かける人も多いだろう。飛行機の中は砂漠並みに乾燥しているなど、体にとってとても過酷。きちんと対処しておかないと、足がむくんだり、耳や目、のどが痛くなったりしてしまう。せっかくの旅行を台無しにしないためにも、飛行機内を快適に過ごすちょっとした工夫を覚えておこう。
全身の血行悪く
長時間動かないで座り続けていると、全身の血行が悪くなり、重力の影響で水分が下半身にたまってしまう。足のむくみが起こりやすくなる。筋肉の少ない女性に多い。また、いわゆる「エコノミークラス症候群」の危険もある。4時間以上動かないでいると、血栓ができて肺血栓そく栓症を引き起こしやすくなる。
座ったままでも足を動かす運動をしたり、機内を歩くなどこまめに体を動かしたりすると、むくみや血栓の予防に効果的だ。ゆったりとした服装も予防策になるが、ひざ下は少しきつめに締め付けるストッキングや靴下をはくといい。
東京慈恵会医科大学宇宙航空医学研究室の須藤正道准教授がすすめるのが、通常よりも強く脚を締め付ける「弾性ストッキング」だ。ひざまでの長さで、脚の部位ごとに段階的に圧迫して脚の血流を促す働きをする。手足がむくむリンパ浮腫などの医療向けや、旅行向けに販売されている。
須藤准教授は弾性ストッキングの効果を確かめる実験をした。20代の男女8人が飛行機のいすに6時間座ったところ、弾性ストッキングをはいた人のふくらはぎの太さは変わらなかったが、何もはかないと0.7センチメートル以上太くなった。
特殊な方法で下肢の水分量を量ると、弾性ストッキングをはくとほとんど変わらない水分量が、何もはかないと女性では約8%、男性でも約4%増加した。
背が低い人は、飛行機の高めのいすに座ったときにふとももがぴったりといすについて締め付けられると、血行が悪くなりやすい。
「カバンの上に足を載せるなどして、ふとももを浮かすとよい」と須藤准教授は助言する。
湿度は砂漠なみ
機内は湿度10−20%程度と砂漠並みに乾燥している。目が乾いたり、のどや鼻が痛くなったりしやすくなる。また、風邪を引きやすくなるなど、体調を崩す原因にもなる。
「のどが渇いたらこまめに水分をとって」。日本医科大学成田国際空港クリニックの牧野俊郎所長はアドバイスをする。人間の体は通常、何もしていなくても1日1.5リットル以上の水分が体の表面から出ていく。空気が乾燥するとその分、蒸発量は増える。
コーヒーなど利尿作用のあるものをたくさん飲むより、ミネラルウオーターやお茶を少しずつ飲むほうがよい。スポーツ飲料は体の中に水分をためておきやすくする働きがある。
皮膚から水分が出ていくのを抑えるために、長袖の服を着たりマスクをしたりするのも効果的だ。
ただ、アルコール飲料の取りすぎには注意したい。機内の気圧は、富士山の5合目に相当する0.7−0.8気圧程度で、体内の酸素分圧も約2割低下する。息苦しさを感じるほどではないが「地上の2、3倍の速さで酔いが回ってしまう」(牧野所長)。乾燥対策といっても、酔っ払っては元も子もない。
大きい気圧変動
飛行機の離着陸時に、突然耳がキーンと痛くなった経験は多くの人にあるだろう。機内の気圧が急に下がったり上がったりして、鼓膜の内側と外側の気圧が変わることが原因だ。放っておくと帰国後に中耳炎になることもある。
あめをなめていると耳が痛くなりにくい。あめと一緒につばを飲み込むことで、鼓膜の内側の中耳から口とのどの間まで続く耳管を空気が通って気圧を調節してくれるからだ。鼻をつまんで息を吹く「耳抜き」も効果的だが、やりすぎると鼓膜を痛めて耳が痛くなったり聞こえにくくなったりする。
また、離着陸時に赤ちゃんが耳の痛みで突然泣き出すことがある。ミルクやジュースを飲ませると気圧を調節できる。
機内を快適に過ごすためには、乗る前に体調を整えておくことも重要だ。牧野所長によると、出発ぎりぎりまで仕事や観光をしていると、若くて健康な人でも飛行機を降りて、気を失ったり嘔吐(おうと)をしたりして診療所に運び込まれるケースがあるという。せっかくの休日。余裕を持ったスケジュールを組むことが大切なようだ。
時差ボケ対策も大事
海外旅行で気をつけたいのは時差ボケ。4時間以上の時差があると起こりやすい。夜に目が覚め昼間に眠くなるだけでなく、疲労感が残り食欲が低下することもある。
人間の体のリズムは、25時間周期。日本からだと欧州など西へ向かうときには、1日が長くなり、時差の影響は少ない。時差ボケになっても、4日間ほどで自然になれる。逆に米国など東へ向かうと、慣れるまで7日間ほどかかるといわれる。
機内の時間の使い方を少し工夫すると、時差ボケ対策になる。飛行機に乗ったら、到着地の時間に合わせて食事や睡眠を取る。
機内食が出る時間とは合わないことが多い。機内ではあまり動かずエネルギー消費量も少ない。
「食事は全部食べないなど控えめにしてもよい」と牧野所長は話す。
また、「現地に着いたら疲れていても昼間は寝ないで夜まで起きているとよい」と須藤准教授はアドバイスする。
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