香り豊かな紅茶は、身も心も温まる。寒い冬こそ楽しみたい。いれ方やアレンジ方法などを専門家に教わった。
ポットやカップを温めるのは面倒だし、香りがうまく出せない――。そんなイメージがある紅茶だが、「お湯の沸かし方さえ覚えれば、上手にできる」と紅茶研究家の磯淵猛さんは話す。おいしくいれるポイントは「ジャンピング」。ポットの中で茶葉が上下に動き、香り、色が湯の中に溶け出す状態をいう。この状態を作れば味わい豊かな紅茶になる、という。
ジャンピング状態を作るには、水中の酸素の量を保ち、湯を沸かすのがコツ。酸素量が多ければ、茶葉が浮かぶ。茶葉は時間の経過で水分を含むとゆっくり沈み、うまく湯の対流に乗って動く。
湯の適温は98度
磯淵さんに実際にいれてもらった。まずはやかんに水を多め(1.5−2リットル程度)に入れる。ペットボトルの水を使うなら、よく振って空気を水に含ませてから、ジャバジャバと勢いよく注ぐ。
紅茶の成分を効率良く抽出するには、湯の温度は90度以上とされるが、沸かしすぎには要注意だ。「98度程度で火を止める。100度までいくと酸素量が少なくなる」(磯淵さん)
98度の湯とは「やかんの水面に大きく波が立ち、揺れる状態」。その状態を過ぎ、大きな泡がボコボコとたってくると、酸素が減ってしまう。やかんのフタをとり、湯の表面をみるとわかりやすい。
茶葉人数プラス1
やかんの熱湯は、茶葉をいれたポットに勢いよく注ぐ。茶葉の量の目安は1人前5−6グラム(ティースプーン2杯程度)。スプーンに「人数分プラス1杯」が適量の目安だ。茶葉が水分を含んで、全部沈んだら飲みごろだ。
産地によって茶葉に特徴がある。例えばインド・ダージリン地方のものは、茶葉が1−2センチと長いオレンジペコーと呼ばれるものが多い。スリランカ産は1−2ミリと小さいブロークン・オレンジペコーが多い。一般に茶葉が大きいと柔らかい味わいになり、細かいと抽出が早く、色が濃い。
ミルクティーには細かい茶葉が向く。紅茶の温度が下がるので、事前にカップを温め、ミルクを先にいれて、紅茶をそそぐ。ミルクは低温殺菌牛乳を使うといい。茶葉を煮出してミルクティーにするなら、水と牛乳を2対3の割合で用意し、水をいれた鍋を火にかけ、茶葉をいれる。葉が開いたら牛乳をいれ、茶葉が中央に集まるまで温める。「牛乳を入れる前にシナモンやクローブなどをまるごと入れたり、粉状のスパイスを飲む前に振りかけたりすると香りが楽しめる」(東京・中央のインド料理店グルガオン)
ポットにいれたホットティーをアイスティーで楽しむ時は、いったん紅茶を耐熱容器に移す。別の容器に氷をいれて、紅茶を一気に注ぎ入れ、瞬時に冷やし再度、紅茶だけを保存容器に移す。キャンディ、ニルギリなどの茶葉を使うと濁りにくい。
ティーバッグの場合は、沸騰したての湯をカップに勢いよく注ぎ、空気で浮かび上がらないように、ティーバッグをカップの縁から滑らせるようにいれる。「蒸らす時は温度が下がらないよう、ソーサーでフタをする」(リプトン)
いれ方をマスターしたら、次はアレンジ編だ。季節の果物を入れるとフルーティーな香りが加わり、よりおいしくなる。ミカンやリンゴのほか、イチゴやバナナも合う。
水でも変わる味
様々な味わいの茶葉を選ぶのも楽しみだが、水の種類によっても紅茶の渋みや色合いが変化し、おもしろい。
「軟水でいれると色が薄く、味と香りは強くなる。逆に硬水やアルカリ水だと色は濃く、味と香りは弱くなる」(磯淵さん)。水道の水が一般に軟水の日本は紅茶の味がよく出やすい一方で、渋みが強くなりがち。
これを踏まえ茶葉と水の組み合わせを考えてみよう。例えば、水道水(硬度が30から100)や「ボルヴィック」でいれるなら、キャンディやニルギリといった渋みや香りが比較的少ない茶葉がいい。
中硬水(同100から300)の「エビアン」などなら、特有の渋みがあるダージリンやウバなどがまろやかに飲める。硬水(同300以上)やアルカリイオン水でなら、渋みや味が強い紅茶が飲みやすい。渋みが苦手な人はぜひ、お試しあれ。
いれ方の基本と季節のアレンジティー
紅茶のいれ方
@茶葉をティーポットに入れる。ティースプーンに人数+1杯が目安
A湯を沸かす。表面に大きな波が立ち、揺れてきたら火を止める
B高めの位置から茶葉にめがけて湯を勢いよく注ぐ
C茶葉が熱湯の対流に乗って浮遊する「ジャンピング」。この間に味、香り、色が湯に溶け出す
季節のアレンジティー
ホットアップルティー
@ポットに茶葉と薄くイチョウ切りにしたリンゴを2、3枚入れ、ストレートティーをいれる
A薄切りにしたリンゴをカップにも入れ、その上にロゼワインか白ワインを少々ふりかける
BAの上から@を注ぐ
ミカン&ワインティーカクテル
@ミカン2分の1個を搾ったものと、ガムシロップをグラスにいれる
Aアイスティー120ccを注ぐ
BAの上から赤ワインまたは白ワイン20〜30ccを注ぐ
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