湿度・温度・姿勢 ちょっと工夫
空気枕や足のせを
乗る前に子ども遊ばせて
長時間のフライトでぐっすり眠りたい。夏休みが始まり、海外旅行に飛び立つ人も多いはず。現地に向かう飛行機の中を快適に過ごし、気持ちよく旅のスタートを切るために、窮屈感があるエコノミークラスでも心地よく眠れる方法を考えてみた。
「映像スクリーンや近くの人の読書灯がまぶしいので、アイマスクは必携」
「足がむくむのでジーンズのようなタイトな服は避けた方がよく眠れる。靴はスリッパに履き替えた方がラク」
インターネットの情報サイト「地球の歩き方」のクチコミ情報掲示板には、長時間フライトで快適に眠るための心得が寄せられている。
「旅なれた人は機内を心地よく過ごすためのちょっとした工夫がうまい」と話すのは、同サイトを運営する地球の歩き方T&E(東京)の大石彰彦メディア事業部副本部長。
「2枚のバンダナを結んでアイマスク代わりにしたり、化粧水を肌に塗って乾燥を防いだりと、アイデアで安眠を心がけている」
長時間の飛行中ぐっすり眠るためには、機内環境をきちんと知ることが肝心だ。
まず大切なのが乾燥対策。日本航空インターナショナル健康管理室の松永直樹主席医師は「通常、40−50%が快適とされる湿度は機内では20%以下。非常に乾燥した状態」と説明する。
目元やのどが渇いて不快感がつのる。その代表例がコンタクトレンズ。乾燥すると違和感が強まり「角膜を傷めやすくなるので外した方がいい」(松永氏)。体内に水分をきちんと補給することも大事で「眠る前にこまめに水分を補給すること。ただ、アルコール類には利尿作用があり、かえって脱水状態に近づくので飲み過ぎないないように」。
次に温度。乗客数にもよるが、機内は22−25度に設定されていて、寒く感じることもある。手足が冷えると眠りづらくなるため「機内で貸し出してくれる毛布や上着を1枚はおると眠りやすくなる」(松永氏)。
一方、気圧の低さを指摘するのは「快適睡眠のすすめ」(岩波新書)の著書、広島大学の堀忠雄教授。上空の機内は0.8気圧程度に低下し「高度2000メートルの山の上と同じ状態」。耳が痛くなることがあるのは気圧低下によるもので、アメをなめ、唾液(だえき)をのみ込んで対応する。
堀教授はさらに「眠りやすい姿勢が大切」と説く。基本は頭をぐらつかせない、腰回りを安定させる、足をリラックスさせる――の3つ。首や腰とシートの間のすき間に丸めたタオルなどを挟むと安定した姿勢を保てる。足をおろしたままだとむくみやすいので、離陸して水平飛行になったら「荷物を詰めたカバンを足のせとして置いて、靴を脱いで足を伸ばすといい」。
旅行用品では快適な睡眠を助けるグッズも売られている。「J’s旅道具Travel Pageant池袋店」(東京)では、空気枕やアイマスク、耳栓、腰当て、足乗せクッションなどをそろえている。「空気枕はパンパンにすると寝心地が悪くなるので、ふわふわ感を残して空気を入れるのがコツ」と鈴木佐和子店長。乾燥対策ではのどがガラガラにならないように「保湿性の高さをうたったマスクもおすすめ」という。
自分の安眠対策を講じても、家族旅行の場合「子どもがなかなか寝つかない」という悩みも聞かれる。地球の歩き方T&Eの大石氏はそんな場合「空港での待ち時間に十分遊ばせて、適度な疲れがたまると眠りやすくなる」と話す。例えば成田国際空港や関西国際空港には出国手続きを終えた子どもが使えるプレースペース、中部国際空港には展望風呂などがある。こうした施設を利用するのも一案だ。
広島大の堀教授も「初めての海外旅行だと子どもが緊張していることが少なくない。機内では親がよく話しかけるなど、リラックスさせてあがることが安眠につながる」とアドバイスする。
機内で心地よく睡眠を取る方法
@「機内の湿度は20%以下。乾燥対策は万全に」
・コンタクトを外す
・化粧水やウエットティッシュで肌の水分を保つ
・寝る前にこまめに水分をとる。アルコールは控えめに
・のどがガラガラにならないようにマスク着用も一案
A「ゆったりとした服装で体をリラックス」
・ジーパンなどタイトな服装は避ける
・ズボンのベルトなどをゆるめる
・靴は脱いでスリッパに履き替える
B「眠りやすい姿勢を心がける」
・空気枕を利用
・腰とシートのすき間に丸めたタオルなどを入れる
・足は下ろしたままにせず、カバンなどにのせる
C「気圧が低いことも頭に入れて」
・離陸後はアメなどをなめる
・おなかがふくれやすくなるので炭酸飲料は控えめに
D「子どもは搭乗前に遊ばせておく」
・空港のプレールームなどを利用、適度に疲れさせる
・機内ではよく話しかけて緊張をほぐす
(広島大の堀忠雄教授らの助言をもとに作成)
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