冷え・不摂生が大敵
適度な運動欠かせず
水分補給や食生活改善も
運動中や就寝中、何の前触れもなく、ふくらはぎがつり、強い痛みに襲われる「こむら返り」。冷えや水分不足、さらには暴飲暴食など日ごろの不摂生が引き金となるケースもあるという。日ごろの予防法や対処の仕方を専門家に聞いた。
千葉県在住の主婦、中原景子さん(42、仮名)は明け方、ふくらはぎの激痛で目が覚めた。思わず出した大声で起きてしまった夫が、足の指を自分の方に押してくれたおかげで、痛みはすぐ和らいだが、「最近、足がつりそうになることがよくあって……」。
「こむら返り」とは、ふくらはぎ(こむら)の筋肉が突然、収縮したまま元に戻らなくなってしまった状態だ。足の裏や指、太ももなどでも起こる。全日本鍼灸(しんきゅう)マッサージ師会の小沢繁之・常任理事は、こむら返りが起きる主な理由として、冷え、筋肉疲労、消化器系統の不良の3つが考えられるという。
ゴルフやマラソン、水泳など運動中になりやすい印象があるが、日常生活の中でも「危険」は潜んでいる。例えば就寝中。夜中に気温が下がるうえに、「血液の流れもゆっくりとなり、筋肉への酸素供給量が減っている」(小沢常任理事)ため、こむら返りが起きやすい。
寒い中で立ち仕事を続けて、急に別な仕事をしたときになることもある。水泳中に足がつるのも、低温や筋肉疲労が影響している。大量に汗をかいたり、下痢などによる水分不足、飲み過ぎや食べ過ぎで胃腸が弱ったりしているときも要注意だ。
有楽橋クリニックの林泰院長は、就寝中の対策として、「寝る前やトイレに起きたとき、2、3回、うがいをして最後に、おちょこ2杯くらいを飲むとちょうどいい」とアドバイスする。風呂につかり十分、体を温めてから布団に入るのも効果がある。布団はできるだけ、軽い方がよい。
日ごろの食生活では、水分補給のほか、カリウムやカルシウム、マグネシウムといった、筋肉の収縮にかかわる電解質や、筋肉代謝に必要なビタミンB1をとることが重要だ。カリウム補給には緑黄色野菜や淡色野菜、海藻類、カルシウムなら小魚や牛乳などをバランス良くとる。
運動前なら、ラジオ体操をするなど軽く全身の筋肉や関節を動かすだけでも効果がある。小沢常任理事によると、普段から腰のちょっと下や、両側のお尻の真ん中あたりに指やげんこつを当て、足元までジーンと心地よく響く場所を探して、何度か押してやると、下肢の筋肉の緊張がとれやすくなるという。
一般的に年齢が高くなるほど、足がつりやすくなる。ただ、ダイエットなどで食生活のバランスが崩れていたり、運動不足だったりすると、年齢に関係なく、こむら返りになる可能性がある。
実際にこむら返りになってしまった場合はどうするか。足のつま先を自分の方へ曲げるようにして、ふくらはぎの筋肉をよく伸ばすと痛みが緩和される。ただ、急激にすると、筋肉が炎症を起こす恐れもある。そこで、小沢理事が勧めるのは、まず一方の手でふくらはぎをさすって温める。もう一方の手でつま先を持ち、自分の方へ伸ばしてから、いったん、もとに戻す。この動作を20−30回程度、繰り返すことで痛みを和らげることができる。
基本的に健康に影響はないといわれているが、あまり頻度が高かったり、長い時間、けいれんが続くようなら、肝臓病、糖尿病の薬剤の副作用、甲状腺疾患なども考えられる。「気になるようなら、一度、内科に受診した方がよい」(林院長)という。
こむら返りに効果のあるツボ
腰の下あたりやお尻の真ん中あたりを指やこぶしで押して足元にまでジーンと心地良く響く場所を刺激する(全日本鍼灸マッサージ師会の小沢繁之常任理事の話より)
こむら返り予防に効果のある食物
栄養素 多く含まれる食物の例
カリウム ・緑黄色野菜…トマト、ブロッコリー、ピーマン、ニンジンなど
・淡色野菜…ハクサイ、キャベツ、タマネギ、ダイコンなど
・コンブやワカメなど海藻類やキノコ類
カルシウム ・牛乳、ニボシなどの小魚
マグネシウム ・カキ、ハマグリ、アサリなどの貝類
ビタミンB1 ・タマゴ、ブタ肉、胚芽(ぬか漬け)など
(有楽橋クリニック林泰院長の話を基に作成)
こむら返りになった場合の対処法
1 つった部分に手を当て上下にさすって温める
2 温めつつ、もう一方の手で、つま先を自分の方に倒し、徐々に足を伸ばす
3 足を伸ばした状態から、また徐々に足を戻す
4 2と3を20〜30回繰り返すと痛みが和らぐ
(小沢繁之常任理事の取材を基に作成) |