生活習慣の乱れなどが原因となる2型糖尿病患者が積極的な生活習慣改善に取り組むと、従来の治療だけを受けた患者に比べ、脳卒中の発症が少なくなることが、厚生労働省研究班(主任研究者=山田信博・筑波大学長)の大規模調査で明らかになった。9日、欧州糖尿病学会誌に発表する。生活習慣の改善が、合併症の減少につながることが証明されたのは、初めてという。【永山悦子】
調査は、全国の医療機関に通う40-70歳の2型糖尿病の男女2033人を対象に実施。従来の治療を続ける群と、治療だけでなく適度な運動を取り入れたり、口腔衛生管理や食べ過ぎないなど生活習慣の改善に積極的に取り組み、主治医の指導回数を増やしたり電話指導を受ける群に分け、96年から8年間追跡した。
その結果、生活習慣改善群の脳卒中発症率が、従来治療群の6割にとどまった。両群の血圧、血中脂質、喫煙率などに差はなく、血糖値も調査開始2-5年目は生活習慣改善群がやや低かったが、最終的には同程度になった。運動量は、生活習慣改善群の方がわずかに多かった。一方、網膜症や心筋梗塞(こうそく)など他の合併症の発症率に差はなかった。
糖尿病で高血糖状態が続くと、血管が傷つき、さまざまな合併症が起きる。太い血管で起きる合併症には脳卒中、心筋梗塞など、細い血管では腎症、網膜症、神経障害がある。
これまでの研究で、検査値の改善が合併症発症を抑制することは分かっていたが、生活習慣の改善と合併症の関係を直接調べたデータはなかった。研究班の曽根博仁・筑波大教授は「脳卒中の大きな原因は高血圧と考えられてきたが、血圧が同程度でも両群に差が表れた点が興味深い。心理的なストレスなど従来の検査では測定されていない未知の要因が関与している可能性がある」と話している。
|