外見気にする女性に人気

歯医者さんは歯が痛くなってから行くところと思っていないだろうか。最近は定期的に歯科医院に通う人が増えてきた。歯磨きでは取り切れない歯垢(しこう)や歯石をとってもらう歯のクリーニングを受けるためだ。虫歯や歯周病を防げるだけでなく、口臭を減らし、歯の黄ばみもとってくれる。

「歯の裏がツルツルして気持ちいいのよね」
50代主婦Aさんは3ヵ月に1回、近くの歯科医院を訪れ、PMTC(Professional Mechanical To Cleaning)と呼ばれる歯の定期検診を受けている。「気になっていた口臭もなくなったし、茶渋で黄ばんだ歯も白くなった」とAさんは喜ぶ。

歯の定期検診というと、日本ではまだなじみが薄い。普通は歯が痛い、歯茎から出血するといった歯のトラブルが起きてから歯科に行く。ところが、日本より歯の健康に気を配る欧米では、定期的に歯科に行くのがごく一般的だ。

虫歯や歯周病になる前に歯科に行き、定期的に虫歯をチェックし、歯垢や歯石を取ってもらう。これがPMTCだ。元来は虫歯や歯周病を防ぐための事前処置だが、歯がきれいになるため、口臭が減り、歯が本来の白さに近づく。こうした歯の見た目が気になる女性を中心に、PMTCの利用が広がっている。

虫歯や歯周病を防ぐ基本は、普段の歯磨き、甘いものを控えたり、よくかんだりするといった食生活だが、これだけではなかなか防げない。

歯の定期検診「PMTC」の流れ

1.歯垢や歯石の付着状態をチェック
2.歯の裏や歯と歯茎の間に付いている
歯石を取る
3.歯ブラシが届きにくい歯間部を
フッ化物入りの研磨剤で磨く
4.表面のデコボコをなくし、
歯垢や着色物をつきにくくするため、
歯の表面やかみ合わせ部分を磨く
5.歯と歯茎の間に入り込んだ研磨剤や歯垢を
酸性水や殺菌剤入りの溶液で洗浄
6.歯を強くする効果があるフッ素を
歯の表面に塗る

「虫歯や歯周病の原因となるのは細菌。その細菌の固まりである強固な歯垢や歯石は、普段の手入れだけでは取りきれない」と、ウチヤマ歯科医院(埼玉県所沢市)の内山茂院長は話す。特に歯と歯の間や歯の裏は磨きにくいため、歯垢がたまりやすい。

PMTCは、主に歯科衛生士が、虫歯の有無や磨き残しをチェックしながら、歯磨きだけでは取りきれない歯垢や、茶渋などによる歯の汚れを取り除いていく。

実際のPMTCの処置は1.歯垢や歯石の付着状態をチェック、2.歯の裏や歯と歯茎の間に付いた歯石の除去、3.歯を強くするフッ化物を含んだ研磨剤で歯ブラシが届きにくい歯を磨く、4.歯の表面やかみ合わせ部分を研磨剤で磨く、5.歯と歯茎の間に入り込んだ研磨剤や歯垢を殺菌剤入の溶液で洗浄、6.歯の表面にフッ素を塗る――といった手順を踏む。

かかる時間は30分から1時間程度。歯磨きだけでは落ちにくい強固な歯垢がたまり始める3−4ヵ月に1回受けるといいとされている。

終わった後は歯の表面がツルツルし、口の中がそう快になる。磨き残しをチェックしてくれ、自分のブラッシングの欠点も指摘してくれるので、正しいブラッシング法も身に付けられる。詰め物をしたり、抜いたりするリスクを減らせるため、トータルでみると、歯の治療費を節約できるとみられている。

「ただし、PMTCで歯を研磨し過ぎると、歯がもろくなり、虫歯になりやすくなる。初期の虫歯は研磨しないとか、研磨する場合も研磨しすぎないようにできるだけ粒子の細かい研磨剤を使う必要がある」と、鶴見大学の五味一博教授は指摘する。すべての歯に研磨剤を含んだ空気を吹き付けて研磨するような歯科は避けた方がいい。

PMTCの料金はまちまちだが、1回5千円程度のところが多いようだ。全国の歯科医院の一割弱が実施していると推定されている。近所の歯科にPMTCを実施しているかどうかを確認してから訪れよう。(『日経ヘルス』編集部)

(2001.9.29 日本経済新聞)