光合成で臓器復活 心停止後、クロレラ投入
製薬会社チーム、ラットで成功
◇移植機会、増加に道
クロレラの光合成能力を利用し、心停止から時間が経過した膵臓(すいぞう)内の酸素、二酸化炭素濃度を改善、機能まで回復させることに、山岡一平・大塚製薬工場主任研究員らのチームが動物実験で成功した。世界で初めて動物と植物の間で、酸素と二酸化炭素のやり取りを実現させた成果で、心停止後の臓器を移植する道が開かれる可能性がある。11日に宇都宮市で開かれた日本蘇生学会で発表した。【永山悦子】
チームは、呼吸不全状態にしたラットの腹膜上に酸素が溶け込みやすい液体とクロレラを入れてLED(発光ダイオード)を照射した。すると、低かった血液中の酸素濃度が、光合成を行ったクロレラからの酸素によって高まる一方で、高濃度だった二酸化濃度はクロレラに取り込まれ、いずれも元通りに近づいた。
また、心停止から3時間放置したラットの膵臓を摘出。同様の仕組みの液体に30分間膵臓を入れ、別の糖尿病のラットに移植した。その結果、移植された全6匹の血糖値が改善し、膵臓が機能していることが分かった。
移植で使われる臓器保存液に入れた膵臓は、6匹中1匹しか血糖値が改善しなかった。
現在、心停止後に移植可能な臓器は腎臓、眼球だけで、それも心停止直後の摘出が必要だ。人に応用できるかどうかは安全性を含めて調べなければならないが、同社特別顧問の小林英司・自治医大客員教授は「呼吸不全に陥った患者の治療や、心停止後の臓器提供の機会を増やすのに役立つのではないか。心停止からの時間が延びれば、家族が別れを告げる時間も十分確保できる」と話す。
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■ことば
◇光合成
葉緑素を持つ植物が、光のエネルギーを使い、吸収した二酸化炭素と水から酸素とでんぷんなどの炭水化物を作り出す仕組み。緑藻類の一種であるクロレラは細胞内に葉緑素を持ち増殖能力も高いため、光合成能力が非常に高い。
2010.9.11 記事提供:毎日新聞社 |