「胃癌予防の目的でHelicobacter pylori(以下ピロリ菌)の除菌を受けにくるケースは増えているが、その後定期的なフォローアップを受けない患者が目立つ。除菌後の胃癌の報告が増えているので心配だ」。そう話すのは、川崎医大食道・胃腸内科講師の鎌田智有氏です。
2009年に改訂された日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌除菌を感染者すべてに行うよう推奨されました。自由診療でピロリ菌を行うケースも増えています。
その一方で、新たに注目されているのが、除菌が成功したにもかかわらず、その後発見される胃癌の報告例です。除菌を行うと、その後の胃粘膜の萎縮性変化の進展は抑制できますが、それまでの萎縮によって蓄積された胃癌発生リスクは残ります。除菌後の胃癌の発見率は年0.23〜0.3%程度。除菌したという安心感から経過観察が滞るケースは要注意と言えそうです。
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