月経困難症

10代に多い「機能性」、投薬が有効

あなたの処方箋: 月経困難症

 日本産科婦人科学会によると、月経困難症の症状は「下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、吐き気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、憂うつ」の順で多い。

 9歳と6歳の子がいる40歳の女性は、16歳で初経を迎えた。その前日、突然下腹部に針を刺されるような激しい痛みを感じ、救急車で病院に運ばれた。以来、年に数回同じような痛みを覚えていたが、妊娠後は数年に1回と大分改善されてきた。専門医で調べたところ、疾病は見つからず「機能性月経困難」と診断された。

 月経困難症は「機能性」と子宮内膜症、子宮筋腫などの疾病による「器質性」に大きく分けられる。

 「機能性」は月経時に子宮内膜から発痛物質プロスタグランジンが大量につくられて子宮が強く収縮するのが痛みの原因だ。この収縮が強いと体を動かすこともできず、脂汗を流すような激痛に襲われることもある。

 体質的なもので、初経後1〜2年以内に発症し、10代の若い女性に比較的多い。聖路加国際病院(東京都中央区)女性総合診療部部長の百枝幹雄さんは「子宮の収縮が強いことや、子宮口が狭いために月経血が排出される時の抵抗が強いことが原因」と説明する。年齢とともに子宮が成熟したり、結婚や妊娠を経験することで症状が緩和されることも少なくない。

 治療法は、プロスタグランジンの生成を抑える「非ステロイド抗炎症薬」を服用するのが一般的だ。うずくまるほどひどい痛みには、即効性の高い座薬もある。重症の場合はすぐ受診して、ズファジランやブスコパンなどの「鎮痙(ちんけい)剤」を注射してもらうと、30分程度で症状が治まるという。

2010.12.22 記事提供:毎日新聞社


【月経困難症】低用量ピルが処方可能に
機能性月経困難症にも

潜在患者数160万人、労働損失額は年間約3800億円─。これは2000年の厚生科学研究で示された、月経困難症に関する推計値だ。

月経困難症は月経期間中に見られる随伴症状で、主に下腹部痛や腰痛などを伴い、「月経痛」とも呼ばれる。患者によっては寝込んでしまうほどひどくなり、働く女性にとっては仕事の効率を下げる悩みの種である。

04年に行われた別の調査では、働く女性の4分の1以上が鎮痛薬の服用を余儀なくされていることが分かった(図1)。一方で、月経痛が「ひどい」女性のうち、産婦人科などを受診したのは3割にも満たなかった。

図1

図1 働く女性の月経痛の程度
女性労働者を対象としたアンケートの結果、月経痛が「かなりひどい」「ひどい」と感じる人は3割近くいた。一方、月経痛がひどい人のうち医療機関を受診したのは24%にとどまった。(「働く女性の健康に関する実態調査 2004年」を編集部で一部改変)

 「月経痛は我慢するものと長らく思い込まれてきたが、女性の社会進出が進んだ今、社会的にも放置できない問題になっている」と東大産科婦人科学教授の武谷雄二氏は語る。

  月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫などに伴う器質性と、器質的異常はないが子宮の過剰な収縮によって引き起こされる機能性とに分けられる。

  器質性の場合は、まず原因疾患の治療を考慮するが、機能性月経困難症に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や漢方薬などによる対症療法が中心となる。ただ、それらの対症療法が奏効しない患者も少なくない。

  そのような機能性月経困難症に対して、産婦人科では低用量の卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合剤(LEP製剤)、いわゆる「低用量ピル」の使用が浸透しつつある。LEP製剤は、排卵抑制作用と子宮内膜の増殖抑制作用によってプロスタグランジンの過剰産生を抑え、子宮収縮運動に伴う月経痛を軽減する。

  わが国では長年にわたり、LEP製剤の保険適用は避妊目的に限られていたが、08年にノルエチステロン・エチニルエストラジオール配合剤(商品名ルナベル配合錠)が、子宮内膜症に伴う器質性月経困難症に対して保険適用された。

  さらに10年11月、新たなLEP製剤であるドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合剤(ヤーズ配合錠)が発売された。同薬は、LEP製剤としてはわが国で初めて月経困難症全般への適用が認められ、機能性月経困難症の患者に対しても使用できる。また、新規の黄体ホルモンであるドロスピレノンを含み、従来のLEP製剤に比べて卵胞ホルモンの含有量が少ないので、むくみなどの副作用も少ないとされる。

  聖路加国際病院(東京都中央区)女性総合診療部部長の百枝幹雄氏は、「月経困難症の治療は、子宮内膜症の発生や進行の予防にもつながる。ライフステージに合った治療が、女性のQOLをより向上させるだろう」と期待している。

2010.12.24 記事提供:日経メディカルオンライン