幹細胞治療で、幹細胞が血管に詰まる副作用を防ぐ手法を、自治医科大のチームが開発し、1日、東京都内で開かれた日本再生医療学会で発表した。同学会は、科学的根拠がなく、安全性が確認されていない幹細胞治療について、「実施を断固容認しない」との勧告を全会員に出す方針。幹細胞治療の安全性を確保する方法の一つとして注目されそうだ。
幹細胞治療は、損傷した組織を修復、再生するため、幹細胞を血管に点滴したり、患部に直接移植する。
同大は大塚製薬工場などと協力したブタの肝臓再生を目指す研究で、血管から人の美容整形などの幹細胞治療でも使われる「間葉系幹細胞」入りの生理食塩水を注入したところ、数日で幹細胞が固まって血管に詰まり、ブタが死んだ。マウスの実験でも、血管閉塞(へいそく)によって死ぬ例が確認されている。分析の結果、間葉系幹細胞は、もともと粘着性が高く、培養の処理で細胞膜が傷つくと、より接着しやすくなることが判明。生理食塩水に間葉系幹細胞を入れると、約30分で底に沈み、くっつき始めた。
そこで、市販されている医療用点滴薬のうち、代用血液などに使う点滴薬を組み合わせた液体を作ったところ、間葉系幹細胞を入れても、沈殿や接着が起きず、浮遊状態が続くことが分かった。
小林英司・同大客員教授(移植・再生医学)は「治療の科学的検証を続けることは必要だが、現状の安易な点滴は危険だ。この成果が、少しでも危険を減らすことに役立ってほしい」と話している。【永山悦子】