放射線対策

放射能対策 100ミリ・シーベルト超えると健康に影響

 放射性物質が体に与える影響は種類によって異なるが、一般的な目安として100ミリ・シーベルトを超えると、健康に影響が出る危険性が高まる。さらに500ミリ・シーベルトでは血液を作る能力が低下し、3000-5000ミリ・シーベルトでは半数の人が死亡するとされている。

 こうした数値と比べると、15日に東京都で測定された0・809マイクロ・シーベルト(マイクロは1000分の1ミリ)や同じく茨城県の5・575マイクロ・シーベルトは、健康に影響はないと言える。胃のエックス線検診の600マイクロ・シーベルトに比べるとはるかに低い。

 被曝の状態には、皮膚に付着した放射性物質など体外から放射線を浴びる「外部被曝」と、放射性物質を体内に取り込むことで被曝する「内部被曝」がある。

 特に問題となるのが放射性ヨウ素やセシウム、ストロンチウムなどによる内部被曝だ。放射線影響に関する国連科学委員会の報告によれば、チェルノブイリ原発事故では、ミルクが放射性ヨウ素に汚染されて、当時、子どもだった地域住民の中から5000人以上の甲状腺がんの患者が確認されている。セシウムは体内から排出されやすいが、筋肉や血液に入ると周辺の骨髄や腸管が障害を受ける。

2011.03.16 記事提供:読売新聞


安定ヨウ素剤 高い予防効果

 一定線量以上の放射性物質にさらされた直後、またはこれからさらされる危険性が高い場合、「安定ヨウ素剤」を服用し、健康被害を防ぐことがある。

 原発事故で放出された放射性ヨウ素を体内に取り込むと、甲状腺に集まり、特に子どもで甲状腺がんの発症リスクが高まる。

 安定ヨウ素剤は、放射能を持たないヨウ素だ。服用すれば、先回りして甲状腺の組織と結びつき、放射性ヨウ素が入り込むのをブロックする。そのため、被曝(ひばく)を低減できる。

 予防的に飲むのが最も効果が高い。放射線にさらされても6時間以内の服用なら効果は大きいとされる。ただ、24時間以上経過すると既に甲状腺に放射性ヨウ素が集積しているので効果は薄まる。

 40歳以上では甲状腺がん発症のリスクが低いため、服用は40歳未満が対象だ。甲状腺機能異常症を患う人やヨウ素、あるいはヨウ素を含有する造影剤にアレルギーのある人には使わない。

 胎児や新生児などに対しては、幼ければ幼いほど発がんの危険性が高まるため、優先的な投与が求められている。日本産科婦人科学会は15日、「計50ミリ・?以上被曝した妊婦や、授乳中の女性」については、甲状腺がん予防のため、50ミリ・グラムの安定ヨウ素剤2錠を1回服用することを勧める見解を公表した。ただ服用した妊婦の胎児や授乳中の女性の子どもは、甲状腺機能異常が懸念されるため、投与後は検査が必要とした。

 このほか、同じく放射性物質のセシウムについても、体外に排出させる薬がある。

 安定ヨウ素剤など、いずれの薬剤も薬局では売っていない。医療機関でも必要と判断した場合に限り処方される。

2011.03.16 記事提供:読売新聞

放射性物質、人体の影響は ガス、ちり...、原発事故


 東日本大震災による東京電力福島第1原発の事故で、燃料であるウランの核分裂でできた放射性物質が大量に放出される事態が懸念されている。ただ放射性物質といっても多種多様で、指摘される人体への影響もさまざまだ。

 気体で放出されるのは、空気中にも微量含まれる「希ガス」のキセノンやクリプトン。ただ軽いため比較的拡散しやすく、濃度が高いまま空中に広まる恐れは少ない。希ガスは化学的に安定しており、ほかの原子とは化学反応しにくく、例え吸い込んでも自然呼吸で排出し、体内には残りにくいとされる。

 同じ気体でも放射性ヨウ素は懸念がある。自然界にある非放射性のヨウ素は甲状腺に沈着、成長ホルモンのもとになる。放射性ヨウ素も同様に沈着し、甲状腺がんを引き起こす場合がある。

 ちりの形で放出されるセシウムは体内に取り込むと、特定の臓器にたまらず全身に広がるが、カリウムと化学的性質が近似しているため、野菜や海藻、豆類などカリウムを豊富に含んだ食品を一定期間摂取すれば排出できるという。だが同じちりでもストロンチウムは骨に取り込まれ、大量なら白血病の原因となる危険がある。

 このほか、原子炉圧力容器などを大きく破壊するメルトダウンの事態に陥れば、プルトニウムが放出される恐れがある。半減期が極めて長く、大きなエネルギーを出すため、臓器や細胞に悪影響を及ぼす。ただプルトニウムは重いため、遠方まで飛散しにくいと考えられている。

2011.03.16 記事提供:共同通信社