家庭用体験型ゲーム機「WiiFit Plus」(任天堂)を利用した運動療法を試みたところ、食後血糖の上昇を抑制できることが分かった。気分の変化をみるフェイススケール値も有意に改善するなど、今後の検討に期待を持たせる結果となった。札幌で開催された日本糖尿病学会(JDS2011)で、太田西ノ内病院(福島県郡山市)の佐久間貞典氏(写真)らが発表した。
演者らは、無理なく楽しく取り組むことができて、かつ長続きする運動療法の確立を目指し、家庭用体験型ゲーム機WiiFit Plusによる運動療法に取り組んだ。
対象は、同病院の外来型運動教室を利用している2型糖尿病患者10人。内訳は、男性4人、女性6人。平均年齢は60.3±10.7歳(男性57.0歳、女性62.5歳)。治療別では、食事療法が4例、経口薬による治療が5例、インスリン治療が1例、BOT治療が1例だった(重複あり)。
方法は、まずWiiFit Plusによる運動を実施する日とWiiFit Plusを実施せず安静に過ごす日を設定。WiiFit Plus実施日には、正からの昼食後に、午後1時から約30分間、有酸素運動プログラムである4種目を実施した。一方の安静日には、正午からの昼食後に、午後1時から約30分間、安静にしてもらった。
血糖測定には簡易式自己測定器を用い、運動開始前(午後1時)および終了時(午後1時半)の2回測定した。安静日にも、安静開始前(午後1時)および終了時(午後1時半)の2回測定し、両者のデータを比較した。
また、気分の変化を把握するために、運動の前後でフェイススケールを用いた調査を実施。合わせてWiiFit Plus運動の感想をアンケートにより明らかにした。
有酸素運動プログラムは、フラフープ、踏み台、ジョギング、ボクシングの4種目。この順番で、それぞれ1分10秒×3回(3分30秒)、2分30秒×2回(5分)、2分50秒×3回(8分30秒)、4分×2回(8分)の運動を実施した。各種目の間にインターバルを設け、全体で30分程度で修了するよう設定した。事前にプログラムを検討した上で、段階的に運動量が上がるよう、このような運動メニューとした。
心拍数の変化をみたところ、WiiFit Plus実施後は平均116.3±19.2拍/分と無酸素性作業閾値の運動強度に相当した。また、総エネルギー消費量は平均147.1±43.5kcalだった。注目した血糖値の変化は、安静日に160.4±32.3mg/dLから177.9±41.5mg/dLへ有意に上昇していた(p<0.05)。一方、WiiFit Plus実施日は、162.6±33.8mg/dLから152.6±39.8mg/dLへの変化で有意差はなかった。
フェイススケールによる運動の評価をみると、運動前は9.7±1.7だったが、運動後は6.5±4.3と改善し、「笑顔」の判定に上昇していた。また、運度に対する感想では、「楽しかった」が9人、「糖尿病運動療法として有用性を感じた」が9人と好評だった。
今回の結果から演者らは、家庭用体験型ゲーム機による運動プログラムには食後の血糖上昇を抑制する効果が期待できると結論。今後は、糖尿病患者がその家族らと一緒に参加するプログラムにも取り組んでいく意向だ。