春野菜は一般にえぐみのあるものが多いが、この味は冬に間に低下していた新陳代謝をアップし、春に向かっての体作りに寄与するという。フキノトウは、ビタミンB1、B2、E、カリウム、カルシウムを多く含み、特有の香りとほろ苦さが食欲を増進し、消化吸収を促す。

フキノトウは花を食べる花菜で、花成ホルモンというものをたくさん含み、精力を増強し、苦み成分であるアルカロイドは新陳代謝を促進するという。また、せき止めやたん切りによいとされ、昔から民間療法として利用されているが、この場合はつぼみの頃に採取して日陰干しにしたものを煎じて飲む。フキノトウは天ぷらにしたり、味噌あえにしたりしてとると春の醍醐味が味わえる。

ウドはウドの大木といわれるが、柱にも薪にもならないことから「大きくて役にたたない人」の例に使われる。栄養面からみても、とりたてて沢山含まれているものはないが、歯触りや舌ざわり、爽やかな香りが、春の息吹を感じさせてくれる。

ほろ苦さは食欲をこう進し、新陳代謝を促進する効果があるといわれ、これはアルカロイドなどの働きによるという。ウドを美味しく食べるのには、生が一番。あえ物や酢の物にするとよい。
タケノコにはカリウムが多く含まれ、えぐみは、アミノ酸の一種、チロシンによるが、これはカテコールアミンを作り、脳を刺激して、やる気を起こさせるそうだ。いずれにしても春野菜の苦みやえぐみは、人にとって春の目覚めを感じさせてくれる。
(新宿医院院長  新居 裕久)
2005年3月19日 日本経済新聞