鮭(サケ)の旬は、秋から冬にかけてで、手軽に手に入る庶民的な美味な魚の1つだ。栄養面からみると、良質なたんぱく質と脂質、そしてビタミン、ミネラルも豊富。

特にビタミンB1、B2、B12といったビタミンB群が多い。これらは炭水化物、脂質、アミノ酸の代謝に関与するので、疲れをとり元気をつける働きがある。またビタミンDも多く、これはカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする。

脂質には多価不飽和脂肪酸であるEPA、DHAが含まれ、血中の中性脂肪値や総コレステロール値を下げる働きがある。さらに血液中に血栓ができるのを防ぐので、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞を予防する。

最近注目されているのは、鮭の肉の赤色の色素である。これはカロテノイドの一種で、アスタキサンチンと呼ばれる脂溶性抗酸化物質で、老化や動脈硬化、がんの発生を促す活性酸素を除去する働きがある。力は同じく抗酸化作用のあるベータカロテンやビタミンEより強く、適量は1日あたり6ミリグラム位という。

鮭には様々な種類がある。アスタキサンチンがもっとも多いのは紅鮭で、100グラム中に3.15ミリグラムだ。次いでキングサーモンと銀鮭がそれぞれ1.05ミリグラム。一般によく食べられているしろ鮭には0.45ミリグラムと少ない。

ところで「チャンチャン焼き」という猟師料理を紹介しよう。これは鮭にビタミンCの多いキャベツやピーマンなど、それに、みそ、砂糖、酒、バター、にんにく、とうがらしを加えて味をつけ、鉄板で蒸し焼きにした料理。鮭、野菜がたくさんおいしくとれるので試みてはいかがだろう。
(新宿医院院長  新居 裕久)


2006.11.11 日本経済新聞