近年は「雑穀ブーム」とも言え、その理由は「健康によい」からという。ところで一口に雑穀といっても、はっきりとした定義はない。日本雑穀協会によると、白米以外の雑穀全般や豆類を含めて「雑穀」としている。代表的なものは、あわ、きび、ひえ、大麦などの穀類や大豆、小豆などの豆類がある。

穀類は精白米よりもビタミン、ミネラル、食物繊維が精白米に比べ約20倍も含まれる。そして、その食物繊維は外皮や糠層の部分だけでなく、白い胚乳(はいにゅう)の部分にも均一に含まれているため、精製した後でも損失が少ない。水溶性の食物繊維であるβ−グルカンも多いので、コレステロールや血糖を下げる効果が期待できる。

大妻女子大学の池上幸江教授は、大麦はほかの雑穀類に比べて生活習慣病の予防に効果的だと述べている。まずコレステロールに対してだが、男女の高脂血症者20人と健常者7人に、1日2回、5割の麦飯(米粒麦を使用)を2週間にわたってとってもらったところ、高脂血症者では、血中総コレステロール値が低下したという。

また糖尿病に対しても効果があるという。名古屋大学の佐藤寿一氏らが、健常者と糖尿病患者に大麦を食べてもらったところ、精白米を食べた場合に比べて血糖値の上がりにくいことが分かった。また便秘の予防、治療効果もある。近年、精麦製品といって、押し麦、白麦、米粒麦、大麦麺が販売されているが、どれもクセがなくおいしくとれるので、日常の食事に大いに取り入れてみてどうだろう。
(新宿医院院長  新居 裕久)


2007.6.2 日本経済新聞