イワシなどに含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸の体内への取り込みに関係する遺伝子が、統合失調症の原因遺伝子の一つであることを、理化学研究所や東北大などの研究チームがマウスを使った実験で特定した。不飽和脂肪酸は胎児の脳の形成過程に必要な栄養素で、妊娠中の不飽和脂肪酸の摂取が不十分だと、統合失調症発症につながる危険性があることも示唆する結果だという。

 研究チームは、音の刺激への反応が統合失調症の患者とよく似たマウスを正常なマウスと掛け合わせ、その孫世代のマウス1010匹の全遺伝情報を詳しく調べることで、発症に関係する遺伝子を絞り込んだ。

 その結果、DHAや卵などに含まれるアラキドン酸などの不飽和脂肪酸と結合し、細胞内に取り込むのを助けるたんぱく質を作る「Fabp7」という遺伝子との相関が強かった。この遺伝子を欠くマウスは、脳の神経新生が少なくなることも確認した。この遺伝子は人間にもある。

 統合失調症の発症には複数の遺伝子と環境要因が複雑に絡み合っていると考えられている。栄養も関係し、妊娠中に飢餓状態に置かれた女性から生まれた子供は、統合失調症を発病する危険性が2倍に高まることが知られているという。

 理研脳科学総合研究センターの吉川武男チームリーダーは「妊婦が適切な量の不飽和脂肪酸を食べることで、統合失調症の発症予防ができるのか研究を進めたい」と話している。
【西川拓】


2007.11.19 記事参考 毎日新聞.