ランダム化試験において、子供の上気道感染症による夜間咳嗽と睡眠障害の症状を解消する効果について親がハチミツ対デキストロメトルファンを採点した
Laurie Barclay |
小児の上気道感染症(URI)による咳の治療には、ハチミツが有望な選択肢であるというランダム化試験の結果が、『Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine』12月3日
号に発表された。
「風邪による咳と睡眠障害の解消を求める1歳以上の小児の親は、ハチミツを試してみるべきだ」と筆頭著者であるペンシルバニア州立大学医学部(ハーシー)の小児科・公衆衛生学准教授のIan M. Paul, MD, MSc
がMedscape Pediatricsに語った。「ハチミツは小児の咳と風邪症状の治療法として世界保健機関(WHO)が挙げており、世界中の文化圏で咳止めとして使われている。小児の咳と風邪症状への有効性が証明された一般市販薬は現在のところ存在しないので、ハチミツは1歳以上の小児には安全であり、広く用いられていることから、研究に値する選択肢である。」
今回の部分二重盲検ランダム化試験の目的は、URIの小児の夜間咳嗽と睡眠困難に対してソバのハチミツまたはハチミツ風味のデキストロメトルファン(DM)を夜間1回投与する場合と治療をしない場合との親の満足度を比較することである。
「Paul博士の研究は、小児の咳治療薬に関する知見をえるものである」とヴァンダービルト大学(テネシー州、ナッシュビル)のMichael Dale Warren, MDがMedscape Pediatricsの独自取材に応じて語った。「咳と風邪の季節の間、小児科医は、風邪を引いた子供の症状を和らげる方法を教えてほしいと親からの質問攻めに遭う。URI小児の治療では、対症療法(生理食塩水の鼻スプレー/点鼻、吸引、冷加湿器、解熱薬、補液、休養)が頼みの綱である。」
今回の臨床試験には直接参加はしていないが、関連する総説の筆頭著者であるWarren博士は、Monroe Carell, Jr. Children's Hospital(ヴァンダービルト)の一般小児科の
クリニカル・フェローであり、臨床小児科講師を務める。
「Paul博士が今回示したのは、URI小児の咳症状の低減にハチミツがどうやら有効であるということだ」とWarren博士は言う。「咳がある小児の治療を選択する小児科医は、小児のURIに伴う咳症状の治療法がもうひとつ増えたことになる。」
単一の一般小児科外来施設において、URI小児105例をランダム化して、ハチミツ、ハチミツ風味のDM、または無処置を就寝の30分前に1回与えた。対象患者は、URIと夜間症状があり罹病期間が7日以下の2歳から18歳までの患者である。
親が連続2日にわたり調査票に記入した。1つ目は患児が最初に来院した日の前日の夜、薬物が使用されていない晩について、2つ目はその翌日で就寝前にハチミツ、ハチミツ風味のDM、無処置が与えられた夜の次の日である。主要エンドポイントは咳の回数とひどさ、咳のうるささ、患児と親の睡眠の質である。
「これはきちんと計画されたランダム化比較対照臨床試験である」とWarren博士は語った。「Paul博士の試験は、小児の鎮咳薬の有効性があるのかどうか、エビデンスのない領域に重要な知見を提供した。博士らは入念に、試験群の治療を揃え、デキストロメトルファン群とハチミツ群の間で盲検性を保つことに務めた。」
治療群の間で症状の改善に有意差があり、スコアは常にハチミツが一番よく、無処置が一番悪かった。対比較によって、咳の回数スコアおよび合算スコアはハチミツが無処置よりも有意に優れていること、DMはすべての転帰で無処置に優っていないこと、ハチミツとDMの転帰には有意差がないことが示された。
「今回の試験で、URI小児の咳症状を鎮めるのに他にできることはないのかという小児科医と親にとって重要な疑問に答えが出た」とWarren博士は言う。「小児でよく使われる主な咳薬には、それを支持するデータが欠けており、それどころか、そうした咳薬に有害性がある可能性を示すデータさえある。一般市販咳薬と風邪薬は6歳未満の小児には使用しないことという食品医薬品局(FDA)諮問委員会の勧告が最近あったばかりなので、この疑問はまさに時宜に適っている。」
今回のハチミツ、DM、無処置の比較に基づいて試験の著者らは、URIで夜間咳嗽と睡眠障害のある小児の症状緩和についての親の評価はハチミツがもっとも良く、ハチミツはURI小児の咳と睡眠障害の望ましい治療選択肢であるということが言えると結論した。この知見が他の試験で確認されることが待たれるが、著者らは、ハチミツのすぐれた結果と、DMにはそうした効果が証明されていないこと、DMの使用に伴い有害作用のリスクと経費がかさむことを考慮に入れるように臨床医に勧めている。
「今回の試験の結果は、我々は普段診療している多くの患者に広く適用できる。2005年の全米外来医療調査によれば、1歳から12歳の小児の外来診療のうちURIによる外来が11%を占めている」とWarren博士は語る。「ハチミツは安価で、有害作用が比較的少なく、有益性も考えられることから、URIに伴う咳の治療には合理的な選択肢である。」
著者らが認めているこの試験の限界としては、すべての小児が試験の二晩の間の日に来院したことが全群において症状の一部の解消をもたらしている可能性があること、症状解消の一部はURIの自然経過によるものであること、主観的調査が用いられたこと、投薬がきちんと行われたかどうかは検証していないことが挙げられる。Warren博士はさらに、この試験で症状の評価に用いた咳の尺度の情報を増やし、その妥当性を正式な論文で検証することが有益であるとも言っている。
「ハチミツの有益性がハチミツの種類によるのかどうかは不明である」とWarren博士は続ける。「今回の試験ではソバのハチミツを使用した。著者らの説明によれば、ソバのハチミツのように色の濃いハチミツはその他の種類のハチミツよりもフェノール化合物の含有量が多く、この種のハチミツで処置した小児で見られた改善にはそうした化合物の抗酸化作用が寄与している可能性がある。この効果がソバ由来によるのならば、特定のハチミツが地元で手に入るかどうかということと、価格により、今回の結論の適応性が限られると思われる。」
Paul博士はMedscape Pediatricsへのコメントの中で、今回の知見を確かめるには、さまざまな種類のハチミツ、反復投与の効果の判定を今後の研究の中で行う必要があると述べている。Warren博士はさらに、より小児に特化した咳症状質問表の開発、観察された症状解消が特定のハチミツの種類によるのかどうかの判定、咳以外の症状でも同様の解消が見られるのかどうか、この効果は成人にも当てはまるのかどうかの評価を行う研究をすることを勧めている。
「Paul博士の仕事は、小児の咳に対するハチミツの影響を特に調べたものである」と、Warren博士は語った。「ハチミツが小児および成人のその他のURI症状にも有効かどうかの判定を今後の研究で行う必要がある。」
とはいえPaul博士は、ハチミツが合理的な治療選択肢であることを、今回の試験に留まらず確信している。
「今回の知見は成人にも適用できると私は確信している」とPaul博士は結んだ。「その他、ハチミツはのどの不快感も解消してくれると思う。」
この試験は、米国農務省の機関で業界が資金を提供している米国蜂蜜協会の支援を受けている。Paul博士は米国大衆薬協会とMcNeil Consumer Healthcare社のコンサルタントを務め、助成
金を得ている。その他の著者の情報では関連する金銭的利害関係はない。Warren博士と共著者らの開示情報によると、関連する金銭的利害関係はない。
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