メタボの予防には

ハンバーガー2つ、フライ1盛、
メタボリックシンドロームを持ち帰りでお願い!


精製穀物、肉、揚げ物に富む西洋式の食事はメタボリックシンドロームのリスクを上昇させるが、乳製品の摂取はメタボリックシンドロームの予防になるようである。

Michael O'Riordan

-WebMDの専門ニュースサービスHeartwireより-

【1月28日】肉、精製穀物、揚げ物に富む西洋式の食事がメタボリックシンドロームの発症リスクを上昇させるという、多くの人々が長年疑ってきたことが、新規研究の結果から確認された[1]。一方で乳製品の摂取は、この心血管系リスク因子となる一群の異常を予防するのに一役買っているようである。

「これまで2-3件のプロスペクティブ研究において、種々の食事成分とメタボリックシンドロームに及ぼす影響が調査されてきたが、本研究はこれをさらに発展させたものであり、全食習慣が調査された」と、筆頭研究者のLyn Steffen博士(ミネアポリス大学、ミネソタ州)はheartwireに語っている。「一種類の食品しか食べない人はいない。西洋式の食習慣、すなわち赤身の加工肉、揚げ物、精製穀物の摂取に加えて青果物、魚、全粒穀物の摂取が少ないことを特徴とする食事では、総じてメタボリックシンドロームの発症リスクの上昇が認められた」。

この研究結果は『Circulation』オンライン版に2008年1月22日付けで掲載されている。

揚げ物も主犯格

リスク因子(ウエスト径の増大、血圧上昇、空腹時血糖の上昇、トリグリセリドの増加、高比重リポ蛋白質[HDL]コレステロールの減少と定義)の集合であるメタボリックシンドロームの種々の要素と食事摂取との間には関連性が認められるが、メタボリックシンドロームの発症に食事が果たす役割については、総じてまだ明らかにされていない、とSteffen博士はheartwireに語っている。

食事摂取とメタボリックシンドロームの関連性を調べるため、研究者らは地域アテローム性動脈硬化症リスク(Atherosclerosis Risk in Communities: ARIC)研究の参加者9,514人のデータを入手した。ベースライン時点でメタボリックシンドロームまたは心血管系疾患が認められた参加者は除外した。研究グループは、66項目からなる食物摂取頻度調査票を用いて食事摂取を評価するとともに、この情報を用いて食事の好みを「西洋式の食事」か「健康的な食事(prudent diet)」に分類した。西洋式の食事には精製穀物、加工肉、揚げ物、卵、赤身肉、炭酸飲料が多く、反対に魚、全粒粉、青果物は少なかった。健康的な食事を忠実に守っていると分類された参加者は、キャベツ、ダイコン、ブロッコリー、ニンジン、カボチャ、赤トウガラシ、ホウレンソウなどの野菜をはじめ、果物、魚、魚介類、トリ肉、全粒穀物、低脂肪乳製品を豊富に摂取していた。

9年間の追跡調査を行ったところ、研究対象となったARICの参加者の約40%がメタボリックシンドロームを発症した。種々の患者背景因子、喫煙、身体活動度、エネルギー摂取量について補正したところ、西洋式の食事の消費によりメタボリックシンドロームの発症リスクが18%上昇したのに対し、健康的な食習慣はメタボリックシンドロームの発症に良くも悪くも影響しなかった、とSteffen博士は述べている。

肉、乳製品、青果物、精製穀物、全粒穀物の消費についてさらに補正して解析したところ、肉、揚げ物、ダイエット炭酸飲料はすべて個別にメタボリックシンドロームの発症リスクに関連していることが明らかとなった。一方で乳製品の摂取は、メタボリックシンドロームの発症予防に働くようである。

メタボリックシンドロームの3,782例についての9年間の多変量補正ハザード比(95% CI)

食習慣
第1五分位層
第5五分位層
傾向のp値
西洋式の食事 1 1.18 (1.03 - 1.37) 0.03
健康的な食事 1 1.07 (0.95 - 1.20) 0.11
各食品
1 1.26 (1.11 - 1.43) < 0.001
青果物 1 0.87 (0.77 - 0.98) 0.006
乳製品 1 1.10 (0.98 - 1.24) 0.09
全粒穀物 1 1.02 (0.92 - 1.14) 0.76
精製穀物 1 0.89 (0.78 - 1.01) 0.15

西洋式の食事によるメタボリックシンドロームのリスク上昇は、赤身の加工肉の消費量増大によるリスクの影響を受けていると考えられる、とSteffen博士はheartwireに語っている。例えば、赤身肉を1日2回消費した場合(最も高位の五分位層)は、週に2回しか肉を摂取しない場合(最も低位の五分位層)に比べてメタボリックシンドロームのリスクが26%高くなった。この研究のもうひとつの焦点は、揚げ物の消費によりメタボリックシンドロームの発症リスクが25%上昇するという知見であった。

研究者らは今回の研究が、昨年『Circulation』に発表され、同時期にheartwireによって報道された研究[2]によく似ていることも明らかにしている。その研究は、0カロリーで無糖であるにもかかわらず、ダイエット炭酸飲料の消費によりメタボリックシンドロームの発症リスクが上昇することを報告したものであった。

「ダイエット炭酸飲料については何が悪影響を及ぼすのかよく分からない」と、Steffen博士は述べている。「その中にインスリン抵抗性を増大させるある種の化合物が含まれているのかもしれないし、リスクを上昇させるような何らかの行動に関係があるのかもしれない。ダイエット炭酸飲料にはカロリーがないため、クッキーやケーキを余計につまむことに罪悪感を感じにくいのかもしれない」。

肥満の蔓延に加えメタボリックシンドロームの有病率の上昇もみられることから、この多因子性の症候群の発症リスクを低下させるには、特定の食品や栄養素に限らずありとあらゆる食事パターンを明らかにすることが重要となっている、とSteffen博士は述べている。5皿から9皿の野菜・果物を毎日摂取することを推奨している米国心臓協会(AHA)の食事ガイドラインに従えば理想的かもしれないが、これを実践している人は極めて少ない、とSteffen博士は述べている。野菜と果物のほかには、2皿分の低脂肪乳製品と3皿分の全粒穀物を毎日摂取することが推奨されている。


1. Lutsey PL, Steffen LM, Stevens J. Dietary intake and
the development of the metabolic syndrome. Circulation.
2008;DOI:10.1161/circulationaha.107.716159. Available at:
http://circ.ahajournals.org.
2. Dhingra R, Sullivan L, Jacques PF, et al. Soft drink
consumption and risk of developing cardiometabolic risk factors and the
metabolic syndrome in middle-aged adults in the community. Circulation.
2007;116:480-488.

WebMDの専門家向けニュース配信サービスであるHeartwireの全コンテンツは、循環器専門医向けウェブサイトwww.theheart.orgで読むことができる。

2008.2.4 記事提供 Medscape