ビタミンCの摂取で骨折のリスクが減る
骨折リスクを減らす効果を得るには、食事によるビタミンCだけでは不十分で、サプリメントによる摂取が必要
Alison Palkhivala
Medscape Medical News
(モントリオール)ビタミンCの食事による摂取ではなく、サプリメントも含めた総摂取量が、股関節および椎骨外の骨折のリスクの減少に連関しているという研究結果が、9月14日の米国骨ミネラル研究学会の第30回年次会議で発表された。
「我々が調べたかったのは(骨粗鬆症の)修正可能なリスク因子であり、食事はまさに修正可能だ」と共著者で発表を行ったMarian T. Hannan, DSc, MPHがMedscape Diabetes & Endocrinologyに語った。「ビタミンC(の摂取量)は修正がとてもしやすい。このビタミンは水溶性であるので、容易に摂食・吸収ができる……(その上、)抗酸化作用によって骨の再吸収を抑制する……(また、)コラーゲン作用もビタミンCに直接関係している。」Hannan博士はヘブライ・シニア・ライフ加齢研究所(マサチューセッツ州ボストン)の筋骨格研究部門の上級研究者で副部長を務めている。博士は、ハーバード大学医学部(ボストン)の准教授でもある。
筆頭著者のShivani Sahni, PhDを初めとする研究チームは、フラミンガム骨粗鬆症研究に参加した958例の被験者を対象にして、ビタミンC摂取量(総量、食事による量、サプリメントによる量)と股関節および椎骨外の骨折の発生率との関係を評価した。1988年から1989年の期間で、まず被験者に食品摂取頻度質問表に答えさせた。その後、被験者の股関節骨折については2005年まで、椎骨外骨折については2003年まで追跡した。Sahni博士はヘブライ・シニア・ライフで加齢の研究を行っているポストドクターである。博士はタフツ大学(ボストン)の博士過程在学中にこの研究を行った。
試験期間中、全部で股関節骨折は100例、椎骨外骨折は180例の被験者に起こった。ビタミンCの総摂取量とサプリメント摂取量が下位3分位(3分位1)の群は、上位3分位(3分位3)の群に比べて、股関節骨折と椎骨外骨折が有意に多く発生した。性別、年齢、肥満指数、身長、喫煙状況、運動量、総エネルギー摂取量、骨塩密度、エストロゲン摂取量(女性の場合)、総合ビタミン剤摂取、ナトリウム摂取について調整しても、この差は消えなかった。
ビタミンC総摂取量は、下位3分位群が平均97 mg/日であり上位3分位群が平均305 mg/日であった。3つの3分位群を通じた股関節骨折および椎骨外骨折の傾向のP値は、0.04であった(股関節骨折は3分位2がハザード比[HR] 0.73、95%信頼区間[CI] 0.45 - 1.20であり、3分位3がHR 0.56、95%CI 0.31 - 0.98であった。椎骨外骨折は3分位2がHR 0.98、95%CI 0.68 - 1.40であり、3分位3がHR 0.64、95%CI 0.42 - 0.99であった)。サプリメントによるビタミン摂取量は、3つの3分位群を通じて平均0 mg/日から260 mg/日まで大きな開きがあり、股関節骨折の傾向のP値は0.02(3分位2がHR 0.50、95%CI 0.20 - 1.24、3分位3がHR 0.31、95%CI 0.13 - 0.73)、椎骨外骨折の傾向のP値は0.06(3分位2がHR 0.81、95%CI 0.38 - 1.73、3分位3がHR 0.58、95%CI 0.30 - 1.11)であった。
「基本的に、ビタミンC摂取量が高レベルのものは、ビタミンC摂取量が最低レベルの者に比べて、股関節骨折の発生率が半分であった」とHannan博士は言う。「同様に、サプリメントでビタミンCを摂取している者は、サプリメントによる摂取をしていない者に比べて、股関節骨折がおよそ半数であった。」
この関連性は食事によるビタミンC摂取量のみを評価した場合には見られなかった。Hannan博士はこれは意外ではないと言う。「ビタミンDについて調べた時とよく似ている。ビタミンDは骨の健康に関連することがよく知られている。米国の高齢者のビタミンCの摂取レベルは必要を満たしているが十分ではなく、至適ではない。」
この研究の発表セッションの座長は、ウェークフォレスト大学医学部(ノースカロライナ州ウィンストン・セーレム)の助教授で、Amgen社(カリフォルニア州サウザンド・オークス)の総合疫学部長であるMary S. Anthony, PhDが務めた。Anthony博士もまた、食事によるビタミンC摂取量が骨折の直接的な予測因子ではなかったことを意外に思っていない。「食事によるビタミンC摂取の意義はきわめて小さい」と博士はMedscape Diabetes & Endocrinologyに語った。「(その上、)食事による摂取量は1年の間でも大きく変動する……しかし、サプリメントによる摂取量は安定している。」今回の結果は食品摂取頻度質問表の限界を反映していると考えられる、と博士は述べた。
今回の知見により、臨床ではビタミンC摂取量を考えに入れる必要があると思われる。「我々が今までに得てきたデータは全て、観察的コホート研究によるものだ」とHannan博士は言う。「患者のビタミンCについてチェックしたり、ビタミンC摂取量を増やす何かの処置をしたりすることを医師に推奨するのは、時期尚早だと思うが、その一方で……このことを支持するエビデンスが豊富に存在する。単なる当てずっぽうではない。ビタミンCに気をつけるべきというのは、かなり根拠のあることだ。」
Anthony博士はもう少し先まで語った。「ビタミンCがその他のことに対しても同様に比較的安全でありベネフィットがあるならば、私は人々にフルーツと野菜をもっと食べるように勧めたいし、おそらく総合ビタミン剤(あるいはビタミンCサプリメント)も(いい考えとして)勧めるだろう……骨喪失に対して医師が処方した薬剤を飲むのを止めてビタミンCを摂取しろと推奨するつもりはないが、薬剤に頼る前に第一に採るべき予防策は、栄養によって健康を促進する方法を探ることである。」
この研究は企業からの支援を受けていない。Sahni博士とHannan博士の開示情報によれば、金銭的利害関係はない。
American Society for Bone and Mineral Research 30th Annual Meeting: Abstract 1186. Presented September 14, 2008.