血液凝固を防ぐワーファリン作用をなくす栄養とは?


服薬指導のリスクマネジメント
ワーファリン服用中に納豆を食べる“秘策”を実行した患者

1 処方の具体的内容は?

54歳男性。心房細動。僧帽弁閉鎖不全で僧帽弁置換術を施行。

<処方1>

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ワーファリン錠1mg 2錠
    1日1回 朝食後 14日分

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2 何が起こりましたか?

・ワーファリン(一般名:ワルファリンカリウム)服用と納豆の摂取の間隔を大きく空ければ相互作用がなくなるだろうと考え、朝にワルファリンを服用し、夜に納豆を食べていた。

3 どのような過程で起こりましたか?

・患者は納豆が大好物である。ワーファリンを服用するようになってから、納豆が禁止されて大変につらい思いをしていた。

・ある時、ワーファリンの服用時期と納豆の摂取時期をずらせば問題ないのではないかと考えた。次の日から、ワーファリンを朝服用し、納豆を夕食に食べるようになった。

・ある日、薬局を訪れた患者に対し、薬剤師が再度納豆を食べていないか確認したところ、上記の不適正な使用が明らかとなった。

4 どのような最悪の事態が予想されますか?

・薬効不十分により脳塞栓症を発症し死亡。

5 なぜ起こったのでしょうか?

・納豆、クロレラ、緑葉色野菜、一部の総合ビタミン剤などの摂取により、ワルファリンの抗凝固作用が減弱することがよく知られている。この相互作用は、これら食品などに含まれているビタミンKによる拮抗作用に起因している。

・最悪の場合には、血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の悪化から死亡する可能性がある。

・そのため、ワルファリンを投与されている患者は、納豆およびクロレラの摂取、緑葉色野菜の大量摂取、ビタミンKを含むビタミン剤の服用などを避ける必要がある。ワルファリン服用中に納豆を1回(100g、市販の1包)だけ摂取しても、トロンボテスト値は3日間以上も高値を示すことが報告されている(Artery 1990;17:189-201.)。

・従って、本事例のように、ワルファリンの服用時期と納豆の摂取時期をずらしても、相互作用を回避することは不可能である。

澤田 康文=東京大学大学院教授 情報学環/薬学系研究科 医薬品情報学講座

2009.3.17