健康ブームでサプリメント(栄養補助食品)が人気だ。ただ、種類もメーカーもたくさんあり、初めてだと何を飲んだらいいのかわからずしり込みしてしまう。初心者向けサプリメントの選び方と注意点を紹介しよう。
40代のサラリーマンHさんは、ここ数カ月、毎日体の不調を感じている。朝起きても前日までの疲れが残ったまま。健康診断で精密検査が必要な項目はひとつもなく、持病もないのだが……。
こうした体調不良には、栄養バランスの偏りが関係することが多い。代謝の働きを助けるビタミンやミネラルが不足すると、摂取した糖質や脂質を体内に上手に取り込めず、余った栄養は脂肪となり、肥満や生活習慣病を招く。
不足するビタミンなどを補給し、栄養バランスを整えてくれるのがサプリメント。「仕事が忙しく、生活が不規則で、食事も外食になりがちな中高年のサラリーマンにこそ必要」と神奈川県立保健福祉大学の中村丁次・栄養学科長は指摘する。
ドラッグストアには様々なメーカーが販売する何種類ものサプリメントが並び、どれを選んだらいいのか迷うだろう。Hさんのような元気のない中高年が最初に手に取るべきサプリメントは何か。
特定非営利法人(NPO法人)日本サプリメント協会(東京・港)の後藤典子代表理事は、体に不可欠な微量栄養素をまんべんなく含むマルチビタミン・ミネラルを勧める。「栄養バランスの偏りを解消してくれる」からだ。
特定の成分だけを含んだサプリメントは体のバランスを整えた上で、さらに気になる点を補うために取る。たばこを吸う人は喫煙によって失われやすいビタミンCを摂取する。脂肪が気になる人は肥満の予防に有効とされるビタミンB群がよいといわれている。
健康診断で血圧や血糖値が高めと指摘される人は多い。こうしたグレーゾーンの人は栄養補給に加えて、生活習慣病予防向けのサプリメントを活用するのもよい。血圧やコレステロール値を正常に保つことを助ける効果が科学的に立証された「特定保健用食品」が目安になる。
選ぶ際にはかならずラベルを見るようにしよう。原材料名は重量が多いものから順に書いてある。マルチビタミンの場合、成分表示を参考にして優先度の低いビタミンK、Dを除く11種類のビタミンが含まれることを確認し、あるビタミンだけが極端に少ないものは避ける。ただし、表示は製品ごとに1粒あたりや5粒あたりなどまちまちなため注意する。
サプリメントは加工食品。食後すぐに取ると体に吸収されやすい。1日6粒の場合は、一度に飲まずに朝昼夕の食後に2粒ずつ取る。多く取りすぎても栄養が偏るだけなので、1日の摂取量は守る。
薬を飲んでいる人はのみ合わせに注意がいる。相互作用で薬効を弱めたり副作用を招いたりすることがある。日本サプリメント協会は、5月をメドにのみ合わせデータベースをホームページで公開する予定。
忘れてはいけないのが、サプリメントの利用は日々の食事が基本にあるということ。
「(食事を抜くなど)不摂生の埋め合わせにサプリを取るという考えは大きな間違い」と専門家は口をそろえる。摂取した栄養は運動と休息と組み合わさってはじめて効果が発揮される。ジョギングやスポーツをする時間がない場合でも、極力、階段をのぼったり1日30分以上歩いたりするなど軽い運動を心がけること。代謝は寝てる間に高まるので、睡眠不足が続いた後は意識して寝るようにする。
健康状態を詳しく調べて、個人の体調にあったサプリメントを処方してくれる専門クリニックを利用するのも1つの手だ。
新宿溝口クリニック(東京・新宿)では、血液検査で60項目以上を調べ体の状態を分析する。健康診断などでは「問題なし」とされた結果でも栄養学的に分析することでビタミン不足などを診断する。遠方で来院できない人を対象に、全国200以上の協力医療機関で血液検査を実施し、インターネットなどで解説やカウンセリングを実施する。
「サプリメントドック」を手掛ける高輪メディカルクリニック(東京・港)でも血中の酸化度、動脈硬化の目安、ビタミン・ミネラルバランスを分析、必要なサプリメントの種類、量を指導してくれる。
気になる症状や生活習慣 |
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ビタミンB群、マルチミネラル |
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ビタミンA、B群、ブルーベリー |
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イライラする、怒りっぽい |
ビタミンB群、カルシウム、マグネシウム |
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ビタミンB群、E、ウコン |
たばこをよく吸う |
ビタミンC、E |
(注)
EPA=エイコサペンタエン酸、DHA=ドコサヘキサエン酸。日本サプリメント協会の情報を参考に作成 |
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