アメリカ人にとって肥満の増加は、大きな社会問題だ。大阪大学前田和久・医学部講師によると、米国ではここ40年以上にわたって懸命に脂肪をとらないようにしてきたが、肥満は増加した。また20年ぐらいで、糖尿病は40%も増えたという。悪い脂肪のとり過ぎと、高炭水化物食によるものといい、うなずける。
理由としてまず考えられるのは、アメリカ人に脂肪をとるなといっても、日本人が米食をせずにいられないように、とても簡単には減らせないということがある。しかも、アメリカ人のとっている脂肪は、体脂肪を増やしたり、血中総コレステロール値を上昇させたりする飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪だ。
また、植物油もとっているが、多く使われているのは、水素を添加して作ったトランス脂肪酸を含むもの。フライドポテトや菓子パンなどに使われており、動物性脂肪に近い性質を持っている。
そこに重なってきたのが、高炭水化物食だ。アメリカでは心臓病の学会が、長寿国日本に見習って炭水化物を勧めた。しかし、米中心の日本と違い、アメリカは小麦などで甘く味付けしてしまいがち。これを脂肪と一緒にとりすぎると、血糖値やインスリン、血中中性脂肪値の上昇や、善玉のHDLコレステロール値の低下をきたし、体脂肪を増やす。
そこで、脂肪をとるならオレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸の多い植物油を増やし、炭水化物のとりすぎを抑えるべきだ。この点からみると、アメリカ人のやってきたことは問題が多いように思われる。
(新宿医院院長 新居 裕久)