植物油の効果は多様

バターやヘット、ラードのような動物性脂肪(飽和脂肪酸が多い)は血中総コレステロール値を上げるが、植物性脂肪(不飽和脂肪酸が多い)はこれを下げる働きがある。その強さは油の種類によって異なる。

植物油のうちよく使われる大豆油、コーン油、べに花油などにはリノール酸と呼ばれるn−6系の多価不飽和脂肪酸が多く含まれる。これらは血中総コレステロール値を下げる働きがあるが、悪玉(LDL)コレステロールだけでなく、余分なコレステロールを取り除いてくれる善玉(HDL)コレステロールまで下げてしまうので、問題視されてきた。

だが、この結果は高コレステロール血症の予防や治療のために、リノール酸の多い油を取り過ぎたときに起きるので、日本人が日常取っている量くらいなら、あまり心配ないことが分かった。

一方、オリーブ油は健康によいといわれる。この中にはオレイン酸と呼ばれる一価不飽和脂肪酸が多く含まれる。やはり悪玉コレステロールを下げるが、リノール酸よりもその力が弱いかわりに、善玉コレステロールは下げないという特性を持つ。

えごま(しそ)油には、アルファ−リノレン酸と呼ばれるn−3系の多価不飽和脂肪酸が多く含まれる。悪玉コレステロールを下げる働きはリノール酸より弱いが、血中中性脂肪値を下げる働きを持つ。いずれにしても、植物油に多い不飽和脂肪酸は、血中総コレステロール値の低下作用があるので、それぞれの油の持つ特徴を知って、好みの油をおいしく取る方が健康的である。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2006.5.20記事提供:日経新聞