遺伝で決まる酒の強さ

酒に強い人と弱い人がいる。元筑波大学教授の原田勝二氏によると、それはアルコールを分解するALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素2)をつくる遺伝子型の違いによるという。

酒を飲むとアルコールは主として肝臓内で代謝され、アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドになり、これは酢酸まで分解され、最終的に炭酸ガスと水になる。アセトアルデヒドを酢酸に分解するために、もっとも重要な酵素はALDH2である。

ALDH2には、活性を持つ酵素をつくるN型遺伝子と活性を持たない酵素をつくるD型遺伝子がある。これらは両親から1つずつ受け継ぐことになるので、NN型、ND型、DD型の3つの型が生じる。NN型はアセトアルデヒドの分解能が高く、DD型は分解能が悪い。ND型はその中間にある。

ところで、アセトアルデヒドは毒物で、これが体内にたまると顔が赤くなったり、気分が悪くなったり、心臓がどきどきしたり、息苦しくなったり、汗をかいたりする。そのため、アセトアルデヒドの分解能の悪いDD型は悪酔いや二日酔いを起こしやすい。

一方アセトアルデヒドの分解能の高いNN型は酒豪になりやすい。日本人の場合、NN型は60%、DD型は5%、その中間のND型は35%の割合で存在する。遺伝子の違いは人種によって異なり、白人や黒人はD型遺伝子を持つ人はほとんどいないので、酒に強いという。酒に弱い人は酒量を適度にし、強い人は肝臓病やアルコール依存症になりやすいので十分な注意が必要だ。
(新宿医院院長  新居 裕久)

 

2006.12.2記事提供:日経新聞