ナッツは健康食

太ると思いがちだけど…
油良質、血液サラサラに
ミネラルや食物繊維も豊富

脂肪分が多くて高カロリーだから太りそう――。そう思われがちなナッツだが、実は食べ方次第で、ダイエットや生活習慣病予防の味方にもできる食材。縄文の昔から、日本人にとって大切な食料源でもあった、ナッツの健康効果を確認してみよう。

ダイエット効果も

摂取カロリーはどちらも同じで、ナッツを含む食事と含まない食事を半年間続けたらどうなるか。米国で行われた65人を対象にした実験では、ナッツを含む食事の方が、ダイエット効果が高いという結果が出た。

クルミ、ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、カボチャの種……。
身近なものを挙げるだけでもいろいろ。これらナッツ類は重量の半分からそれ以上を脂質が占めている。通常、ダイエットするためにはまず脂質の摂取を減らすというのが一般的。なのにナッツがダイエットにいいのはなぜか。

まだ研究は途上だが、今のところ、3つの理由があると考えられている。

まず、ナッツの油は良質な油であるということ。そもそもナッツは、わかっている範囲でも縄文時代から日本人が重要な食料源にしてきた食材だ。肉食文化が本格的に始まる明治以前まで「脂肪分を補う食品として、欠かせない栄養源になっていた」とお茶の水女子大学の近藤和雄教授は説明する。

ナッツには、オレイン酸やαリノレン酸といった、血液をサラサラにする脂肪成分が多く、健康にいい油の代表とされるオリーブ油の組成に似ている。茨城キリスト教大学の板倉弘重教授は「オレイン酸は、体脂肪をたまりにくくする働きや、血液中の悪玉コレステロールを減らす作用を持っている」と話す。

次に、ナッツは腹持ちがいい。脂質が多く、硬さがあるから自然によくかんで食べるようになり、満腹感が得られやすい。冒頭で紹介したものとは別の実験で、ナッツを取り入れてダイエットすると、空腹のつらさが軽減されるためか、途中でやめる人が少ないという結果も出ている。

3番目の理由は、「ミネラルや食物繊維を豊富に含む」こと。「ナッツに多いマグネシウムは、脂肪の吸収を抑える」と近藤教授。また、重量の6%から10%を占める食物繊維には、便通改善作用や血糖値上昇を緩やかにする作用がある。

ナッツの魅力は、これらのダイエット効果だけにとどまらない。健康的な肌を維持するのに欠かせないビタミンEをはじめ、各種の抗酸化物質を豊富に含んでいる。板倉教授は、「激しい運動や、日光による紫外線の刺激といったストレスの害を防ぐ予防的に食べるのもおすすめ」と話す。ナッツに含まれる抗酸化物質が、血液ドロドロの原因となる過酸化脂質の生成を防いでくれるという。

抗酸化物質はナッツの薄皮部分に多い。例えば、薄皮と実がぴったりとくっついているアーモンドやクルミ。やや渋みがある薄皮も一緒に食べられるのがいい。クルミの脂肪分は、ほかのナッツに比べて、酸化されやすいリノール酸の割合が高いが、「抗酸化物質の多い薄皮と一緒に食べると、これが酸化防止剤になってくれる」(近藤教授)。

食べ過ぎには注意


ただし、ナッツが良質な食材といっても食べ過ぎると太る危険性はある。「間食でとるエネルギー量として妥当なのは200キロカロリー程度。これを1日分として食べるといい」と近藤教授はいう。ナッツ200キロカロリー分の目安は片方の手のひらに軽く1杯程度。

食前のおやつの時間といった、小腹がすく時間帯に一つまみ食べれば、食事の食べすぎを予防できる。ナッツは持ち運びが便利で、保存性もいいので、バッグに忍ばせておくと便利だ。商品を選ぶときは、余分な塩分や調味料を加えていない「無塩タイプ」がおすすめ。
(日経ヘルス編集部)

1日に食べたい200キロカロリー分のナッツ

【アーモンド】
22−25粒(33グラム) ビタミンや食物繊維が豊富。200キロカロリー分を食べると、1日に必要なビタミンEがとれる
【カシューナッツ】
22−24粒(36グラム) 炭水化物が多く甘みがある。200キロカロリー分で約2ミリグラムの亜鉛(1日に必要な量の約4分の1)とれる
【クルミ】
10−15粒(30グラム)
αリノレン酸の量が多い。血管を軟らかくする作用があり、動脈硬化の予防効果が期待できる
【ピスタチオ】
47−55粒(33グラム)
食物繊維とカリウムが多い。コレステロール値を下げる作用についての報告もある

2007.9.29記事提供:日経新聞