山のうなぎ「やまいも」の実力

やまいもは、“山のうなぎ”ともいわれ、古くからスタミナ食品とされている。ところで、やまいもといってもいろいろな種類があり、その仲間には、じねんじょ、ながいも、いちょういも、つくねいもなどがある。やまいもの共通性は、ねばねば、ぬるぬるして、うなぎのような感触があるので、滋養強壮食品として珍重されているようだ。

しかし栄養面からみると、うなぎに比べて、たんぱく質、脂質は少なく、炭水化物(でんぷん質)は多い。ビタミン、ミネラルは、カリウムが多く含まれているが、他はそれほど多くない。

それでは、滋養強壮効果を示す成分はというと、はっきりと確定されてはいないが、ねばねば、ぬるぬる成分のムチンと呼ばれるたんぱく質と多糖類が結びついた、糖たんぱく質ではないかと考えられている。

ラットを使った成長実験によると、飼料にムチンを加えて飼育した場合、体重及び睾丸(こうがん)の重量の増加、並びに若干の延命効果が認められたそうだ。またムチンには人に対して、成長促進効果のあることが分かった。人工栄養時の発育実験で、人工乳にムチンを加えたところ、発育が良好になった。さらに、ビフィズス菌の増殖を促したという。

スタミナ実験として、ラットにムチンを与えたところ走行距離が2倍近くも延びたそうだ。やまいもは、とろろ汁と麦ごはんという組み合わせでよくとられるが、これだけでは、たんぱく質と脂肪、ビタミン、ミネラルが不足するので、スタミナづくりには、栄養のバランスのとれた食事の中でとる必要がある。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.10.20記事提供:日経新聞