一般的に女性の飲酒量は男性に比べて少ないが、近年、女性の社会進出に伴い、増加の傾向がみられる。特に30−50代の女性に多い。この年代は、夫婦間の悩み、育児の悩み、嫁姑間のトラブルなど、家庭内の問題で、飲酒の習慣がつきやすいのかもしれない。
ところで、女性がアルコール飲料を男性と同様にとると、精神や身体にいろいろな問題が起きるとされる。たとえば、毎日アルコール飲料をとらないと気持ちが落ち着かなくなるアルコール依存症や、アルコール性肝機能障害などに短期間でなりやすいという。
女性が男性よりもアルコールの障害を受けやすい理由は、女性ホルモンが、アルコールの代謝を阻害することなどが考えられている。
また、妊娠中に多量の飲酒を続けていると「胎児性アルコール症候群」が起こることがある。その症状は、出産児の発育の遅れ、学習、記憶、視覚、聴覚などの中枢神経系の障害などだ。そして死亡率も高くなる。
女性がアルコールによる様々な弊害を回避するには、その量は、男性の適量の半分くらいにとどめることが大切である。その適量とは日本酒で二分の一合(90ミリリットル)、焼酎で三分の一合(60ミリリットル)、ビールで缶ビール1本(350ミリリットル)、ワインはワイングラス1杯(120ミリリットル)くらいである。
なお、米国のハーバード大学は、71−81歳の女性を対象にした研究で、今述べてきたくらいの量だと、認知機能障害が起こりにくいと報告している。
(新宿医院院長 新居 裕久)