緑茶のがん予防効果については、はっきりとされていなかったが、最近厚生労働省研究班による研究から次のようなことが分かった。
まず、40−69歳の男女約9万人を対象にして、7−12年間追跡調査を行った。緑茶を1日1杯未満飲む人を基準にし、1日1−2杯、3−4杯、および5杯以上飲むと答えた人の胃がんのリスクを比較した。すると、女性の場合1日5杯以上飲む人で、胃がんリスクは30%くらい低かった。しかし、男性の場合は緑茶によるリスクの低下ははっきりしなかった。
また、同研究班は、40−69歳の男性約5万人を対象に、12年間追跡調査を行ったところ、その間404人が前立腺がんと診断され、内114人が進行性がんだった。
ところで、緑茶をよく飲む男性は進行性の前立腺がん(前立腺以外にもがんが広がっている進行性のもの)のリスクが低くなることが分かった。つまり、1日緑茶を5杯以上飲む人は、1杯未満の人に比べて発がんリスクが半減したのだ。しかし、がんが前立腺内にとどまるものについては明確なリスク低下はみられなかった。
緑茶ががんを予防する成分については、ポリフェノールの一種のカテキンが考えられ、それが細胞内の遺伝子を傷つける活性酸素を消去する働きがあるからではないかといわれている。緑茶にはカフェインも含まれ、これは飲むと頭をスッキリさせたり、疲労をとったり、消化吸収を助けたりする働きがある。1日5杯くらいの緑茶は起床時や3度の食事の時にとるようにすれば簡単にとれる量だ。
(新宿医院院長 新居 裕久)