肥満は万病のもと
かつてわが国では、世界の先進国の中で最も肥満の少ない国でした。米を主食に、野菜や海草を多食する日本の伝統食では大食しないかぎり肥満にはならなかったのです。それどころか肥満は金持ちのシンボルのようなものでどちらかといえば好意的にみられていました。しかし近年、日本でも肥満が増え始めました。今では若年者の場合、欧米人のレベルに達しています。
肥満と病気の関係については、これまでに多くの研究報告があり、いずれも肥満が「諸悪の根源」であることを証明しています。特に多いのが血液血官系疾患です。
この疾患では、高脂血症や高血圧を起こしやすく、これが動脈硬化を促進し、心臓病、脳血管疾患などの重大な障害を招きます。これらの病気のほかに、指肪肝、胆石症、関節障害、大腸癌なども肥満により発症しやすくなります。
内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満
肥満の原因は摂取カロリーと消費カロリーのアンバランスです。私たちは食物から得た栄養をエネルギーに変え、これを消費することによって生命を維持しています。その際、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが崩れて摂取カロリーのほうが多いと、余分なカロリーが脂肪として体内に蓄積されます。これが肥満の原因です。
日本人に肥満が多くなったのは、食生活の欧米化により動物性食品の摂取量が飛躍的に増えたことによります。
適正体重にはいろいろな指標がありますが、体格指標(BMI)がよく利用されます。これは体重を身長の2乗で割った数値で表されます。日本人の場合、20から22が標準とされ、これを超えると肥満と判定されます。
肥満は、どこに脂肪が蓄積しているかによって、内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満に分けられます。内臓脂肪型肥満は文字通り内臓に多く指肪が蓄積しますから、上腹部が大きくなります。
生活習慣病になりやすいのはこのタイプの肥満です。従って内臓脂肪型肥満は病的肥満とも言われます。
これに対して、下腹部やお尻、太ももなどに脂肪が多い肥満は皮下脂肪型肥満あるいは生理的肥満と呼ばれます。どちらのタイプの肥満かは、へその部位の周囲の長さをヒップの周囲の長さで割った値(ウエストとヒップの比)で分かります。この値が男性では1以上、女性では0.8以上あると内臓脂肪型肥満というととになります。
内臓脂肪型肥満の人は生活習慣病を起こしやすいので、速やかにダイエットする必要があります。皮下脂肪型肥満はすぐに病気を招くわけではありませんが、内臓脂肪型肥満に変わる場合も少なくないので、やはり解消するに越したことはありません。
ダイエットの基本
ダイエットの基本は、肥満の原因とは逆に、摂取カロリーよりも消費カロリーを大きくすることです。摂取カロリー(食事)をそのままにして消費カロリーを大きくする運動療法もその一つですが、なかなか長続きしない人が多いのも現実です。しかしながら運動療法は高脂血症や高血圧、高血糖の改善に役立つので無理のない範囲で継続することをお勧めします。
そして、ダイエットの主役は食事療法です。つまり摂取カロリーの制限ということになります。一般に行われている食事療法はいろいろとありますが、減食をする、しないに大別できます。減食によって減量する場合は次の点に注意が必要です。
@摂取カロリーを極端に少なくしない(体力維持に必要な食事量は摂取する)
A脂肪の摂取を全体のカロリーの20〜30%に抑える。ただし、これ以下に抑えると、必須脂肪酸の欠乏、脂溶性ビタミンの吸低下を招く。
Bタンパク質はやや多めに取る。
Cビタミン、ミネラル、食物繊維は十分とる。
D良く噛んで食べる。良く噛めば少量でも満腹感を味わえるので減食しやすくなります。
次に減食しないでダイエットをする方法ですが、食欲を我慢しないですむので人気があります。これには低カロリー食品を多くとりながら摂取カロリーを抑える方法と、食事のときに消化酵素の働きを阻害する食品(ダイエット食品)を一緒にとって、消化器官で摂取カロリーを制限するものがあります。
消化酵素の活性を阻害するものとしては脂肪を対象にしたものもありますが、一般に使われているのは糖の吸収抑制を目的としたものです。ミネラル成分を多く含んだ、ウーロン茶、杜仲茶などが糖の吸収抑制に有用だとして人気を集めていますが、最近、桑葉茶がダイエット時の栄養補給飲料として期待されだしてきました。
桑葉は肥満防止に有用?
桑葉がなぜダイエット時の栄養補給に有用なのかですが、桑葉には糖分解酵素の働きを阻害する顕著な作用があります。ただし、桑葉茶などの栄養補助食品を利用する場合には、食事の質、量をコントロールすることが大事です。「これさえとれば、好きな食べ物を好きなだけ食べてもダイエットできます」というわけにはいきません。
栄養のバランスを考えながら摂取カロリー(食事量)をある程度減らします。特に脂肪分の摂取量を抑え、逆にビタミン、ミネラル、食物繊維はたっぷりととるようにします。食事をこのようにして、なおかつ桑葉成分を摂取すればその有用性を十分いかすととができます。ダイエット補助食品として桑葉は、ストレートな減量に対してよりも内蔵の脂肪蓄積を抑制する有用性を評価すべきといえるでしょう。
桑葉のその他の効能
桑葉にはこの他にも生活習慣病に対する多くの有用性が認められています。
@血液血管系疾患
神奈川県科学技術政策推進委員会のプロジェクトは、動物実験で血圧抑制作用、脂質改善(コレステロール低下作用) 、血栓予防効果(血小板凝集作用、線溶系活性作用)などについて報告しています。
A肝機能改善
桑葉エキスによる動物実験で肝機能を示すGOT、GPTなどの数値の改善が見られました。
B老化、ガン抑制作用
老化や癌の原因物質として活性酸素があげられていますが、桑葉抽出エキスに活性酸素の一種である過酸化脂質の生成を抑制する作用があることが分かりました。また、遺伝子を傷つけ、これに異変を起こさせて発がんに導く化学物質(変異原物質)の変異作用に対する影響を調べたところ、数種類の変異原物質(発ガン物質)に対して抑制作用のあることが確認されました。
桑葉或いは桑葉成分の有用性については、食後血糖の抑制作用を除いて、まだ研究が始まったばかりですが、近い将来、さらに多くの有用性が発見される可能性があります。