朝食の意義=當瀬規嗣


真健康論:第39回 朝食の意義=當瀬規嗣

 朝食を取らない日本人が増えつつあることが、厚生労働省の平成22年国民健康・栄養調査で報告されています。全体では男性の13・7%、女性の10・3%の人が朝食を取っていないのです。1食抜くぐらいのことに目くじら立てなくてもと、思われるかもしれませんが、朝食の意義やメリットを考えると、放置できないと考えています。

そもそも、なぜ朝食を取るのかというと、それは睡眠と関係があります。日本人の平均の睡眠時間は7時間ぐらいですが、そうすると、朝起きたときには少なくとも7〜8時間は食べていないことになります。もし夕食を夕方に食べたとすると、食べていない時間は半日近くになります。

1食分の食べ物を消化吸収し終わるのに4〜5時間かかると言われています。つまり、朝起きた時には、体は一種の飢餓状態になっていて、朝食を取るのは極めて自然な行為なのです。もし朝食を取らなかったとすると、お昼まで、さらに5時間程度、飢餓状態が続くことになります。この状況は、体に少なからず悪影響を及ぼします。朝食を取らないと、集中力が低下して、仕事や勉学などの効率が下がることが明らかになっています。

では、朝食を取ることのメリットは何でしょうか。一つは、食べることで、まだ完全には目覚めていない体を起こす効果があります。また、食べた栄養素が吸収される際に体に熱が生じるのですが、これが体を温めて活動的になることも期待できます。とくにたんぱく質は熱を生じる作用が強いので、牛乳、卵、納豆、ハム、みそ汁などを朝食に取り入れると効果的です。さらに、朝食を含めて1日3食取ることで、食事内容がバラエティーに富み、栄養バランスを取りやすくなります。

最近の研究では、たとえ1日に食べる量が同じだとしても、朝食抜きの2食で取るより朝食を含めて3食の方が太らないということが明らかになっています。ダイエット目的で朝食を取らない人が多いと言いますが、むしろ逆効果であるということなのです。さらに、朝食を取らない人は肥満になりやすいので、高血圧や糖尿病のリスクが高まると指摘されています。

早起きして、ゆっくり朝ごはんを食べてはいかがでしょうか。健康になりますよ。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)


                                        2013年1月7日 提供:毎日新聞社