なるか薬草の大規模栽培
国産カンゾウ、北海道で



 薬草「カンゾウ」は葛根湯など漢方薬の原料に欠かせない存在だが、安価な中国産を輸入し需要の大部分を賄っているのが現状だ。医薬品原料として国内生産で採算を取るため、大規模栽培に向けた取り組みが北海道で進んでいる。

 カンゾウはマメの仲間で、薬には乾燥させた根を使う。「シルクロードの薬」の異名を持ち、奈良・正倉院にも保管されていて炎症を抑える効能が古くから知られる。食用でも「甘草」の名の通り甘味料としてしょうゆに使われるなど、用途は広い。

 7月3日、北海道名寄市。医薬基盤研究所の薬用植物資源研究センターが管理する農場で、試験栽培されたカンゾウの収穫が行われていた。きしむような「ガガガガ...」という音が辺りに響く。

 収穫に使ったパワーショベルの"悲鳴"は、根から周囲に張り出した根茎にアームが引っ掛かった音。絡まった網のように畑に広がり、根の深さも1メートル近くある。研究サブリーダー菱田敦之(ひしだ・あつゆき)さん(43)は「掘るのが大変」と顔をしかめた。

 中国では野草のように自生し、単価が安い。日本産が対抗するには大規模栽培の実現に加え、人件費を抑えるため、効率的な収穫が求められる。

 当初、ジャガイモやゴボウの収穫機に着目したが根茎には歯が立たなかった。たどり着いたのは、深く掘れてベルトコンベヤーで収穫物を運べるワサビ大根の収穫機。現在は特許申請に向けて改良中だ。

 大規模栽培の可否については、生育条件を探るため、名寄市を含め、道内6カ所で試験栽培を実施。「3年後には国内で実用化のモデルを提示したい」と菱田さんは決意を打ち明けた。

 北海道以外では、新日本製薬(福岡市)が技術提供して、青森、新潟、山梨、熊本の各県内で商品化に向けた実証栽培に着手している例がある。

                                       
2013年7月8日 提供:共同通信社