最近、魚と野菜嫌いの人はアルツハイマー病になりやすいという注目すべき研究結果が発表された。これはアルツハイマー病と食生活の関係を調べている自治医科大学付属大宮医療センターの植木彰教授らの調査によるものである。

植木教授らは、アルツハイマー病の患者約70人の食生活を家族から聞き出し、どんな食べ物が発症にかかわったかを調べてみたところ、次に述べるような共通点を見い出した。@魚をあまり食べず肉を好むA緑黄色野菜をあまり食べないB水分をあまりとらない――などだ。

その因果関係としては、次のように考えられている。

肉類の油を多食すると血中総コレステロール値が上がり動脈硬化が起こりやすくなる。一方魚の油に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は総コレステロールや中性脂肪値を下げたり、血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐ。さらにDHAは、脳内に入り神経細胞の機能維持に関与する。

欧米各国の研究によると、日常魚をとっているとアルツハイマー病の発症率が低下するという。緑黄色野菜には抗酸化作用のあるビタミンCやE、ベータカロテンが多く含まれ、活性酸素の害を抑え、脳の老化を防ぐ。水分が不足すると、血液が固まりやすくなって、脳の血管に障害が起きやすくなる。
魚や野菜をよく摂る伝統的日本の食習慣はアルツハイマー病の予防になりそうだ。旬のさんま、さば、ほうれんそうなどを大いに食べよう。

(新宿医院院長  新居 裕久)
2005.10.8 日経新聞